2018年12月発行ニュースレターNo.17
ニュースレターNo.17のPDFはこちらからダウンロードできますので、みなさま、ぜひご覧になってみてください!
100th Aniniversary!!
福島の子どもの保養施設 沖縄・球美の里
保養100回記念特別コンサート
当基金が支援している福島の子どものための保養施設「沖縄・球美の里」は、2012年7月の発足以来、2019年1月の保養でちょうど100回目になります。
記念すべき保養参加者は小中学生の学童49名です。年末年始に行われる99回目、100回目の学童保養を加えると3,449人の子どもたち、保護者834人、合計で4,283人が保養に参加したことになります。多くのみなさまのご協力・ご支援のおかげです。
100回目の保養期間中に、久米島で特別コンサートが開かれます。ゲストは、全国ではもちろん沖縄において、絶大な人気を誇る古謝美佐子さんです。
このニュースレターをお読みのみなさまに、「お気軽にご参加ください」と誘えないのが残念です。飛行機の便は難しくとも沖縄のみなさんはフェリーで参加できるかも知れませんね。次の200回につながるよう、これからも応援をお願いします。
特別ゲスト 古謝美佐子さん *元ネーネーズのリーダー。自作詩の子守歌「童神」は多くの人たちに愛されています。そのほか、地元民謡グループ「なんくるさんしん」の演奏、福島の子どもたちのパフォーマンスなどのプログラムが予定されています。
たらちねクリニック藤田操院長をお招きして
2017年度 会計および活動報告会
去る2018年8月4日に東京・練馬文化センターで当基金の会計・活動報告会を開催いたしました。猛暑の最中、たくさんの方に足をお運びいただきありがとうございました。
当日はゲストとして、いわき市の「たらちねクリニック」院長の藤田操(みさお)医師をお招きして、福島の子どもたちの様子とこれからの課題についてお話をいただきました。福島原発事故から7年。放射能とともに生きるとはどういうことなのか、私たちがその痛みをどのように共有していったらよいのかを改めて考えさせられるものでした。
当基金の募金収入につきましては、2018年5月決算(2017年度決算)は前年度に比べ3割減でしたが、15年度とはほぼ同額でした。但し、会員数は年々減少しており今後の課題です。皆さまの引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。決算報告は、18年7月発行のニュースレター、当基金ホームページにも掲載しております。
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原発事故当時は東京で勤務医をされていたという藤田操先生。しかし翌年にはあぶくま山地のひらた中央病院へ。そのかたわら、いわき放射能市民測定室たらちねや沖縄・球美の里の甲状腺検診に足を運ぶようになり、やがて久米島に移住して公立久米島病院に勤め、昨年「たらちねクリニック」の院長に就任されました。
最近は風邪をひいた、血圧が高いといったような症状で来診される方も増えてきているとのことですが、事故の後は、放射能の健康への影響を気にされる方がたくさんいたので、子どものための人間ドック〈子どもドック〉を始めたというお話をされました。
検査の項目は、甲状腺超音波(エコー)検査、ホールボディカウンター(全身放射能測定器)、尿中セシウム測定、身長・体重・視力・聴力・血圧などの身体計測・生理学的検査、尿一般検査、心電図と、本格的です。
甲状腺検診は福島県の県民健康調査のひとつとして、福島原発事故当時18歳以下の子どもを対象にしても実施されています。これまでに悪性ないし悪性の疑いと診断された人は200人を超えました。
県の検査でも超音波検査が用いられていますが、その結果の判定基準は、A1(正常)、A2(5ミリ以下の結節と20ミリ以下ののう胞)、B(20・1ミリ以上ののう胞、または5・1ミリ以上の結節)、C(直ちに二次検査を要する状態)です。しかし、液状のものがたまったのう胞と細胞の塊である結節には大きな違いがあるので、たらちねでは、さらに詳細に、A2a(発育期の過程で発生する20ミリ以下ののう胞)、A2b(発育期の反応ではない20ミリ以下ののう胞)、A2c(5ミリ以下の結節)と分けています。これまでの検診判定では、A2aが約98%、A2bとA2cがそれぞれ約1%でした。
尿中セシウムの測定では、どのくらい内部被ばくをしているかがわかります。血液は腎臓でろ過され、不要な物質は尿として体内から出されていくので、身体に取り込まれたセシウムの80%は排出されます。しかし、毎日少しずつでもセシウムを摂取し続けるとそれは体内に蓄積され、その生物学的半減期は、成人が110日、5歳児で30日程度です。
検査の結果を一緒にみながら、食生活などのアドバイスを行っています。伊達市、双葉郡、いわき市などが高くなっていて、地域によって差があることがわかります。
ひとり、数値が異常に高い子どもがいたそうです。普段、スーパなどで食材を買って食事をしているぶんには、さほど値が高くなることはありません。おそらく検査の少し前におじいちゃんとおばあちゃんの家に泊まりにいっていたので、そこで山や畑の物を食べていたのではないかと考えられるということでした。
保養に参加した子どものその前後の尿中セシウムを測ってみたところ、海外(17日間)、沖縄(8日間)の保養で、その平均値はいずれも低くなっていたとのこと。汚染されていない環境で過ごすことで体内の放射性物質は減り、免疫力は高まり、こうして病気になりにくいからだとなっていく。保養の効果は明らかというお話もされました。
子どもたちの保養 報告会
チェルノブイリと福島
12月1日、チェルノブイリ子ども基金と当基金が主催した「夏の保養・報告会」が行われました。
前号のニュースレター発行には掲載できなかったのですが、チェルノブイリ子ども基金のニュースレターや両基金のweb上、メールなどで告知しました。福島から、山形からと遠くからもご参加いただきました。
春に行う救援イベントと秋の保養報告会は毎年実施しています。お二人の保養報告は次ページをご覧ください。黒部さんの講演は次号に掲載します。
- チェルノブイリの子どもたちの保養について、佐々木真理チェルノブイリ子ども基金事務局長が報告。事故から32年が経てもまだ、保養が必要な現状をあらためて知った人も多かったと思います。チェルノブイリ被災地の人たちは、日本の原発事故後、日本の特に子どもたちの健康をとても心配している、というお話もありました。
- 福島の子どもたちの保養について、沖縄・球美の里ボランティア、麻生治成さんが報告。現在大学4年生の通称はるにいは、小学校の先生になるそうです。明るくわかりやすい口調で話してくれました。※2017年4月に琉球新報に掲載されました。
- 小児科医で当基金の代表・チェルノブイリ子ども基金顧問の黒部ドクターは、「放射線と健康について」講演。放射線は、こころと体のすべての病気を起こすきっかけとなるというお話に、佐々木さんのチェルノブイリのお話しと合わせて参加者のみなさんは福島の将来を思い、暗澹たる気持ちだったと思います。参加された福島の方が「子どもの健康は、大人が守らないといけない」に一同頷きました。
チェルノブイリ子ども基金事務局長 佐々木 真理
チェルノブイリ子ども基金では、1997年からチェルノブイリ被災地の、甲状腺がんの手術を受けた子どもを対象に保養プロジェクトを行ってきました。年月の経過とともに、甲状腺以外のがんや血液の病気などが現れてきたので、現在はさまざまながん、血液やリンパ系の病気の子どもたちを保養に招待しています。
汚染区域の子どもが、きれいな土地で安全な食べ物を食べ、必要な治療を受けながら1か月程度過ごすことで、体内の放射能が20〜30%下がることが明らかになっています。
そして病気の子どもたちにとって一番大切なのは、仲間との交流です。重い病気のために、手術や治療といったつらい経験をした子どもたち。その経験を分かち合える友達と出会うことで、つらいのは自分だけじゃない、自分はひとりぼっちでなない、わかってくれる友達、親身になって相談できる先生やお医者さんもいると知る。心の元気を取り戻し、病気に立ち向かっていく力となる。保養の前と後では、見違えるように元気になった子たちを何人も見てきました。心の回復は体の回復にもつながります。これが保養プロジェクトの一番大切なことです。
沖縄・球美の里ボランティア 麻生 治成(はるなり)
今夏の保養では、例年にないくらい数多くの台風接近に見舞われながらも、無事150名の子ども達が元気いっぱい、思い出たくさんの久米島生活を送ることができました。久米島ならではの食材を、島のねぇね、にぃにが美味しく料理してくださりお腹いっぱいなりました。綺麗な海でたくさん泳いで、沖縄相撲大会に出場し、老人クラブの方々との交流会もありました。さらには、数年前に保養者として来ていた子が高校生になってボランティアに来てくれたり、リピーターの子どもに数年ぶりに再会できたり、「人との繋がり」という素敵な感動を味わうことができました。
社会や制度だけでなく、子ども達を取り巻く環境はとても早い速度で変わっていきます。そんな中、沖縄・久米島という緑豊かな自然の中でゆっくりゆっくりと、のびのびとした環境で生活をする。人間本来の知恵や経過、いろんなことを考える、そんなきっかけが久米島にはあると思います。 球美の里もゆっくり進化しながら、これから先もずっとこの活動を続けていけることを強く願っています。どうか、福島や沖縄から明るく平和な未来が日本全国に広がっていきますように。
たらちね8年目の活動
母と子のこころのケア
いわき放射能市民測定室たらちね事務局長 鈴木 薫
http://www.iwakisokuteishitu.com/
2018年11月13日で、たらちねの活動は8年目に入りました。
2011年の開所準備時期の混乱を思い出すと、それはつい昨日のことのようで、あの頃とあまり変わっていないと感じます。原発事故が起きてしまった福島では、今も、次々と新しい被害が発生しています。心境に変化がないのは、状況が変わっていないからだと思います。新しい被害とは、事故当時には予想もつかなかった子どもと母親のこころの問題や廃炉作業にまつわる過労死、帰宅困難区域の解除に伴う2次的な被曝のことなど、数えたらきりがありません。
たらちねは放射能の測定をする活動から始まりましたが、それは科学的に被曝被害を検証するとともに、見えない放射能を可視化し、共通の問題として人々が共有でき、考えることができる「こころを支える活動」でもありました。17年にクリニックをオープンしたきっかけも「放射能の問題を安心して話せる医療機関がない」という地域の人々の不安なこころに応えることでした。こういった「こころを支える活動」の中で、さらに見えてきたことがありました。それは、震災時、妊婦や新生児であった母と子のこころの不安です。身重の母親の多くは、避難を強いられ、出産を控えた大事な時期に予期せぬ環境の変化を体験しました。遠くの親戚や友人を頼り、たった一人でお産した人も多く、まわりへの気遣いや、これからの子育てへの不安の中、さらには、自分自身が放射能に汚染されているかもしれない心配から、子どもに母乳を与えることもできないということは、その当時出産した母親たちの多くが経験したことでした。
そのころに生まれた子どもたちが 今は小学生です。たらちねでは、クリニックのオープンを機に、小児精神科の渡辺久子先生に来院する母子のこころのケアについて教育を受ける機会をいただきました。渡辺先生は、母子のこころの問題について危機感をもち、あの日の出来事が永年にわたり人々に与える影響について心配しておられました。本来ならば、人が一生のうちで一番安心していられる胎内の環境が、原発事故という未曽有の恐怖により、羊水は冷え、胎盤は堅くなるなどが起き、胎児の時から世の中の不安を体感せざるをえなかった子どもたちがいることに気づいている専門家は数少ないと感じます。
いま、「ママとキッズのこころ相談室」開設の準備を始めました。「遊びのちから」をかりて、箱庭あそび、お絵かき、粘土、折り紙、陶芸、身体心理マッサージなど、子どものこころが安らぎながら開放できるような環境を整えています。体験時にはセラピストも同席し、渡辺先生をはじめとする医師、専門家のサポートを受けて進められます。子どもたちのこころのケアは、年齢が小さければ小さいほうが、早ければ早いほうが有効です。私たちにできることは限られていますが、できる範囲の中で尽くしていきたいと思っています。
黒部信一 わたしの履歴
小児科医師
未来の福島こども基金代表
チェルノブイリ子ども基金顧問
たらちねクリニック小児科
https://blog.goo.ne.jp/kuroshin1941
私は、慶応大学日吉教養部や医学部の自治会委員長を務め、卒後は青年医師連合、小児科医師連合、森永ヒ素ミルク中毒被害者支援、インフルエンザワクチン反対運動からワクチントーク全国の運動、チェルノブイリ子ども基金の理事などをしてきました。左派系の活動家と思われていた方もいるでしょうが、もう一つの顔があります。
慶応医学部アイスホッケー部の主将とコーチでもありました。慶応の医学部の二大運動部はボート部とアイスホッケー部です。ボート部は過去にオリンピック出場選手を出し、アイスホッケー部は、医学部ではトップで負けることはまれ。東京都の学連の三部リーグに在籍し、二部に上がったこともあります。対戦校は私がいた頃、東大本学、学習院、青学、明学などでした。
また埼玉県鴻巣に開業後、スキーを始め、海外スキーを楽しみ、カナダはウィスラー・ブラッコム、バンフ。オーストリアのサンクトアントン、アメリカのヴェイルにも行きました。ゲレンデスキーは傾斜40度の壁でもどこでも滑り、カナダでヘリスキーと八甲田と蔵王と月山では山スキー。ほとんど転びませんでした。
若いうちは喧嘩が始まるといつも二番目に飛び出し、カッとするタイプでしたが、心療内科を学んでこころ穏やかになり、今の私になりました。
私は多くの人に助けられて生きてきました。だから多くの人にそれを返していきたいと、生きてきました。多くの同期生たち、全国の運動仲間、医学部のいろいろな分野の先輩たち、東大小児科医師連合の人たち、チェルノブイリ子ども基金の仲間たちに感謝しています。広河隆一さんとは、ベラルーシの子どものための保養施設「子どもリハビリ・健康回復センター〝ナデジダ(希望)〟」やウクライナに行きました。子ども基金は、多くの支援者に支えられてきました。あなたの少しずつの善意が私たちを支えています。一時的なお金はすぐ調達できても、長い間の資金は皆さまの支援しか得られません。今後もよろしくご支援ください。
私は、三浦雄一郎さんやドナルド・キーンさんに負けずに生きていきます。体育会系の人には元気な人が多くいます。三浦雄一郎さんのように、80歳になっても足に重しをつけて歩くなど、トレーニングすることを厭わないことです。私も「うつ」を抜け出してからまた、ストレッチ、テレビ体操、腹筋、腕立て伏せなどを毎日行っています。
お知らせ
募金状況・支援費 2018年6月~11月 2018年11月30日現在
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募金状況
会費 維持会員 37名 370,000円
一般会員 93名 279,000円
募金 5,141,710円
合計 5,790,710円
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支援費
沖縄・球美の里 保養・運営費用 5,000,000円
いわき放射能市民測定室たらちね 1,000,000円
合計 6,000,000円
※ご寄付に感謝です。繰越金との合計から支援しています。
ご寄付団体名は決算時にまとめて公表します。
球美の里保養100回記念
球美の里に大型遊具が仲間入り!
写真ではよくわからないと思いますが、後ろの保健室が小さく見えます。
DAYS被災児童支援募金からの寄贈(アメリカ製)。
子どもたちの未来(あした)をつむぐ ’19/2/2 主催:たらちね
~キッズ・シンポジウム~
「今私たちにできること」
いわき芸術文化交流館アリオス小劇場 12:30~16:00
・講演 後藤政志さん(1989年~2009年 東芝で原子力プラント設計に従事、原子力市民委員会委員)
「廃炉100年、子どもたちの未来と福島のこれから」
・シンポジウム 一部「保養ってどんな効果があるの?」二部「保養事業のこれまでとこれから」
チェルノブイリ33周年救援カレンダー 好評発売中!
(定価700円 詳細はチェルノブイリ子ども基金 ホームページをご覧ください!)
チェルノブイリ子ども基金制作の2019年度版カレンダーは、小さなサイズに変更。
また、写真はチェルノブイリ子ども基金 佐々木真理の撮影。手頃でかわいらしいと好評です。
ノエルの贈り物 WATERMARK arts and crafts 12/8~12/22
JR国立駅から徒歩10分(問)042—573—6625
21人のアーティストによる版画や切り絵、コラージュなどのカードの展示販売。売り上げの一部を毎年寄付してくださっています。
郵送版ニュースレターNo.17にチラシを同封しました。
チラシの情報を更新しています。周りの方に広めていただけますと幸いです。
※郵送チラシ裏面訂正 fax 048‐470‐1501 ⇒048‐470‐1502 お詫びして訂正いたします。
2019年4月21日(日)救援イベント 開催決定!
チェルノブイリ33年、福島8年
ねりまココネリホール19:00~21:00
・講演 崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官、3.11甲状腺がん子ども基金代表)
少し先ですが、今から予定いただけます。
詳細はチェルノブイリ子ども基金および当基金のwebなどで掲載します。ご注目ください。
HP:https://fukushimachildrensfund.org/ FB:facebookページ
事務局: 〒353–0006 埼玉県志木市館 2-3-4-409 向井方
E-Mail fromcherno0311(アットマーク)yahoo.co.jp TEL 090-3539-7611 FAX 048-470-1502