2021年11月発行ニュースレターNo.22

チェルノブイリから学び、子どもたちを守る 未来の福島こども基金ニュースレター

未来の福島こども基金ニュースレター
from chernobyl No.22 2021年11月発行
チェルノブイリから学び、子どもたちを守る

ニュースレターNo.22のPDF(2.3MB)はこちらからダウンロードできます。
みなさま、ぜひご覧になってみてください!

 日本では新型コロナ感染状況も数字上はやや落ち着いてきたように見受けられます。でも世界に目を向けるとまだまだ感染拡大が続いています。私たちは油断することなく、今後もしばらくは慎重な行動が必要と思われます。

 未来の福島こども基金が第一に支援している“福島の子ども 沖縄・保養プロジェクト”、沖縄県久米島での保養は昨年2月より中断したままです。しかし「沖縄・球美の里」では、通常と違う保養なども企画していますので、実施に至るよう願っているところです。

 そして、私たちが保養プロジェクトと共に大きな支援を行っている“いわき放射能市民測定室 たらちね”では、種々の測定活動がコロナ禍以前より忙しいとのことです。自宅にいる機会が増え、身の回りの放射能に改めて目を向けることとなっているのでは、と考えられます。

いつも原稿を寄せていただいているたらちね事務局長の鈴木薫さんからは、衝撃的な原稿が送られてきました。本文をぜひお読みください。

 また、コロナ禍において、経済的に困っている子どもたちを何とか助けたいという思いから、福島県内2か所のフードバンクにこのほど支援することができました。合わせて報告させていだきます。

双葉町の放射性廃棄物処理場を訪問するたらちねスタッフ 2021/10/26双葉町の放射性廃棄物処理場を訪問するたらちねスタッフ 2021/10/26

福島の孤立と
福島の子どもたちの未来について

認定NPO 法人いわき放射能市民測定室たらちね

認定 NPO 法人いわき放射能市民測定室たらちね
事務局長 鈴木薫

https://tarachineiwaki.org

 2021年月日︑私は双葉町出身のスタッフと一緒に双葉町近隣の警戒区域内に入りました。大阪からの支援者のご夫婦組との4人の道中でした。

 警戒区域への入場許可は、スタッフがとっており、まず、最初にスクリーニング場に立ち寄り、タイベックスという防護服をもらいます。そこで、着替えて警戒区域内を移動します。

 「いわき放射能市民測定室たらちね」と大きくドアに書かれたワゴン車で行ったので、職員の方に入場許可の確認を受ける際のチェックに、自家用車で行く時よりも時間がかかりました。「測定室」に対して職員のみなさんが通常ではない緊張感を持っていることを感じました。職員は地元の年配の女性や男性たちで7、8人ほどいました。いわゆる、地元のおじちゃん、おばちゃんたちです。
防護服は頭から足先まで覆うように装着します。

  手袋は3重に重ねます。足も靴の上から2重に足袋のようなものをかぶせ、歩くのも不自由な感じです。
  まあ、そういった重装備で出発しました。
 
  双葉町は、原発事故以前は田畑が広がり、ぽつんぽつんと民家がある、のんびりした田舎でした。
 今は、放射性廃棄物の処理施設群となっています。大きな工業団地以上の広さがあるように感じました。

  焼却場や灰の保管施設など、真っ白い巨大な建物が次々と見渡す限り白くて大きな無機質な建物が続いていて、同行した支援者のフランス人男性は「まるでS Fだ」と言っていました。

 その巨大で無機質な建物群の真ん中に、昔から地域の人たちが親しんで祀ってきた羽山神社があります。そこだけは、なぜか壊されず、残されていました。神社の境内に向かう急な階段を登り、山の上のお社に到着すると、そこからは福島第一原発を見下ろすことができました。
汚染水のタンクが並ぶ様子も見えました。

 小名浜の大きな石油タンクを見慣れている私からすると、東電の汚染水タンクは「ずいぶん小さいな」と感じました。
 その小さなタンクが、蜂の巣のように並んでいました。

 タンクとタンクの間のスペースも狭く、小名浜のタンク群とは設置状況からしてまったく違っており、急ぎ働きでそそくさと設置した様子がうかがえました。タンクのつくりも薄っぺらいように見えました。

 神社は、慎ましくひっそりとしており、同行した支援者の女性が、持参した花束を木の幹のところにお供えしました。亡くなった作業員の霊を弔うためです。

女性はフランスと日本を行き来している人なので、海外で報じられる福島第一原発事故のニュースをいろいろな角度からみていて、自国に帰ることもできない外国の人が原発施設の中で亡くなっていることをニュースを見て知った、ということでした。

たらちねのスタッフの実家は、この神社のすぐ裏手にありました。彼女はいわきに戻ってから、「お花をお供えしてもらって、とても嬉しかった。地元の人間として、その気持ちがとても嬉しかった。」と話していました。

 お花を供えた木の幹の周りは4μSv/h以上の線量でした。
 たらちねがある小名浜の100倍以上の放射線量です。
 神社の階段を下りると、目の前にある放射性物質の焼却場からは煙がモクモクと出ていました。スタッフはそれを見て「怖い…」と小さくつぶやきました。

自分が子どもの頃、遊んだ野山がこんなことになり、家も壊され、放射性物質の廃棄場になってもなお、この地域に思いが残ることは、そこを見捨てられない気持ちなんだろうと思いました。

 傷ついた肉親を、そこに置いて行かなければならないような、そういう辛い気持ちです。

 私は、双葉郡の人々の言葉にならない深い悲しみをこんなふうに目の当たりにしたのは初めてでした。これまで、自分が何もわかっていなかったんだなあ、という気持ちになりました

 道中、廃棄物を積んだトラックと何回もすれ違いました。
 過去に日本の美しい海岸100選に選ばれたことがある双葉海水浴場にも行きました。そこは、津波被害の痛々しい海の家がそのまま残っており、空間線量も高いままでした。

 そこに行く道すがら、廃棄物が詰め込まれたフレコンバック置き場が次々と現れました。野球場がいくつも入るような大きな敷地に黒い袋や緑のシートがかけられた廃棄物がどっさりと置かれていました。それは、警戒区域に入らないとわからない景色です。

 双葉町の伝承館の裏手に位置する大規模な廃棄物置き場は、伝承館を正面にすると、そこからは角度的に見えないようになっており、「うまく(ずるく)考えたなあ…」と思いました。

 オリンピックの聖火ランナーの中継からは、絶対に見えないようになっていて、でも、現実にはS F世界のように、その奥に恐ろしく広がっていました。

 帰りにまた、スクリーニング場に寄りました。
防護服は汚染物として警戒区域内に留めなければなりません。更衣室で防護服を脱ぎ、足の裏をベータ線を測定する測定器で測ってもらい、問題がなければ帰れます。

 メディアにはガンマ線を測定する測定器しか出てきませんが、現場ではちゃんとベータ線を測定する機器を使っており、警戒区域外にベータ線核種を持ち出すことが危険であることを理解していることがわかります。

 そういうことを、世の中に何も伝えず、原発敷地内の水をガンマ線の測定器で測る様子を何度も何度もテレビに映しています。総理大臣が来てもそれをやっており、それで、満足している政治家のみなさんの無知さも、そろそろいい加減にしてほしいと思います。

 スクリーニング場では、入る時は怪訝な様子で迎えられましたが、帰りは職員のほとんどの方が出てきてくれて、みんなで手を振って私たちを見送ってくれました。

 そこに温かい人の気持ちがあることを感じ、「放射能測定室」の私たちに対して、どこか正直に向き合っている現場の人たちの感情が伝わりました。

 測定には力があります。いつも、私たちは最初は嫌がられるけれども、結局は本当の話ができる人たちとして、垣根のないコミュニケーションをとることができます。

見えないものが見えないままであることと、可視化することができることは、やっぱり大きく違うな、と思います。

 国は、事故炉の廃炉措置の人材育成として福島県の浜通り地域の子どもたちを小学生のうちから教育しています。

 伝承館の影に隠れたフレコンバックと同じで、見た目に素晴らしい未来的産業を看板にし、その影で廃炉のための被曝を伴う作業に従事する人材を育てる計画を2014年から実行しています。

 その中で成長した何人もの子どもたちが、その道をたどって廃炉作業に従事しています。

 子どもたちの教育の自由や権利が謳われる中で、道を定めた差別的な教育が実行されています。学力も高く人間性も優れている子どもたちが「誰かがやらなければ」という掛け声で、そこに吸い込まれていきます。そういう話を聞くたびに、教育が浸透してしまっていることを感じます。

 そういう現実を知らない世の中の人は大勢いると思います。
東京電力福島第一原発事故から10年が過ぎ、多くの人々が事故のことを忘れてしまっている現実の中で、福島の孤立は避けられないと思います。

 でも、私たちは、それでも自分たちにできることを続けていきたいと思っています。
私たちがあきらめてしまったら、光はますます遠くなります。

 この頑張りが、未来にとってどれほどのものなのか…大した役には立たないのかもしれませんが、とにかく頑張っていきたいと思っています。

双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日

ニュースレターNo.22紙面ではスペースの都合で掲載できなかった写真一覧をご覧ください。

双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日
双葉町近隣の警戒区域内にて 2021年10月26日

緊急支援

福島県内のフードバンク2か所にカンパと新米を支援

KAKECOMI(カケコミ)白河市

 この度は多大なるご支援をいただきありがとうございます。
お寄せいただいたご支援は、貧困などの生活困難や不登校といった辛さを抱えたこどもたちが地域で孤立せず、可能性を切り拓くための「つながり」を築くこどもの居場所「まかないこども食堂たべまな」の運営に活用させていただきます。
 わたしたちは小さな非営利団体で、居場所を必要とする当事者(シングルペアレントや何らかの障害の保持者、こども食堂を利用する子の親、虐待のサバイバーや不登校経験者)によって運営されています。
 また、今回の新型コロナ禍においては、通常の「こども食堂」の活動に加えて、外出への不安から利用できなくなった親子の孤立を防ぐための食事の宅配等の訪問支援やテイクアウトも始めました。「こども食堂」継続については悩みながらではありますが、子どもたち・親子たちが居場所を失ってしまうことの心身への健康被害を重視し、感染予防の措置を徹底して継続しております。
 活動報告書は毎年月前後にデジタル版をメールでお届けしております。お届けまでしばしお待ちください。
 引き続活動を見守っていただきたく、お願いいたします。

非営利任意団体 カケコミ
代表 鴻巣麻里香
Webサイト:https://www.kakecomi.org/

フードバンクふくしま/いわき市

 フードバンクふくしまは、今年7月にNPO法人いわき自立生活センター(障がい福祉介護事業所)とNPO法人みんぷく(原発事故避難者が住む復興公営住宅住民の支援をしている団体)が設立しました。
 7月10日(土)にいわき市内5か所で第1回食料配布会を行いました。
 チラシ3万世帯にポスティング。約300人に1.2トンの食料を配布しました。袋詰め作業は通所施設の利用者にも参加してもらい、みな「困っている人たちのためにやっている」という充実感が感じられ、この形で継続しようと意気軒昂でした。
 毎月第2土曜日に配布会をやる予定でしたが、いわき市でコロナウイルス感染が広がり「まん延防止措置」が発令されたため、8~10月と第1回配布会で「継続的な配布」を希望した方々に取りに来てもらったり、届ける形で活動を行いました(200数十名の方が登録しています)。
11月から市内5か所での配布方式を復活させる予定です。

フードバンクふくしま代表 長谷川秀雄

大量の放射能汚染廃棄物をごみ焼却施設での焼却に反対

大崎市住民訴訟支援 宮城県

汚染稲わらなど放射能汚染廃棄物の焼却に反対している大崎住民訴訟原告団・弁護団・支援する会からの要請で、今回緊急カンパを送りました。詳細はこちらをご覧ください。
http://chikurin.org/wp/?p=6232

要請書から一部抜粋;

 「大崎住民訴訟とは、宮城県大崎市において、福島原発事故により汚染された汚染稲わら、汚染牧草などの廃棄物(8000㏃/㎏以下)合計約3500トンを、一般廃棄物と混焼する経費等支出が違法であるとして、住民124名が原告となり訴えたものです。
 裁判所は原告側が主張する、より厳密な排ガス測定を認めました。
 しかし、原告側負担の検査費用を関連団体が検査することを認めず、外部に委託することになり、その費用250万円がかかります。測定実施が11月15日からと決められていて、緊急のカンパを要請します」

たらちねへ緊急支援

甲状腺検診機器の支援

たらちねクリニックに新しいエコー機器

たらちねは2013年から甲状腺検診を始めて、これまで多くの方の検診を行ってまいりましたが、検診に使用していたエコー機器に度々不具合が出ていました。
このたび「未来の福島こども基金」のご支援をいただき、たらちねクリニックに新しいエコー機器を購入することができました!
子どもたちの健康を守るため、大切に使わせていただきます。
ご支援をいただきましたみなさま、ありがとうございました。

こどもドック手帳

(※多くの団体・個人のカンパにより手帳の作成・配布が実現しました)

たらちねに検診に来られたお子さんたちに、藤田先生が検診結果を記録し、お渡ししています。
先日、こどもドックを受けに来られた姉妹の保護者さんからお礼のお電話を頂きましたたらちねこどもドックは原発事故当時歳以下だった方を対象にしています。当時は子どもだったけれど現在は成人しているため、ご本人のみ来院されるケースも少なくありません。
これまで、子どもたちの健康を見守る活動を続けてきましたが、その健康管理は親が行っていました。
事故から10年が過ぎ、子どもであった子が成長し、新たな未来を担う立場になりつつあります。
自分自身の健康を守って生きて欲しい。そんな願いが込められた手帳です。

こどもドック手帳

この手帳は、単なる健康記録ではありません。
みなさんの命と未来は、わたしたちの願いです。
わたしたちも、そうして育てられてきました。
みなさんも、つぎの子どもたちへバトンをつないでください。
これは、わたしたちからの、ささやかなメッセージです。

2021年4月
たらちねクリニック院長 藤田 操

ご寄付一覧 2020/6/1~2021/5/31

団体名のみ記載しています。
多くの個人のみなさんからもご寄付をいただいております。
心より感謝申し上げます。

アラカワ商店/WATERMARK arts and crafts/伊藤石油/伊藤法律事務所/小川医院/カトリック仁川教会/川和保育園/川和保育園父母の会/教覚寺/具志川モービル/くまもと子育て・教育9条の会/クレヨンハウス/原発とめよう飯能/玄米カフェじょじょ/小池音楽教室/小金井に放射能測定室を作った会/桜井書店/志木かっぱ油田/渋谷民商布ぞうり「結の会」/人災の町福島を支える会/スラージ/聖心会三光町修道院/チェルノブイリ子ども基金/千葉友の会/「沈黙の春」収益/西小岩幼稚園/日大通り法律事務所/はじめてきもの小梅/ピースライブイン こうち/非核・平和写真展開催を支援する会/東所リサイクルの会/一人静/ひろすえ会/PKO 法「雑則」を広める会/文化の泉/遍照院/法然院/ほっとプラザ/民宿夢民村/麦っ子畑保育園/やじんき法律事務所/山形の会/和らぎヨーガ教室/リサイクルグループカリーナ/龍国寺/ろばや

※総会、今年も中止させていただきました。2020年度の決算報告はWeb上で7月に公表しました。
※みなさまのご寄付のおかげで、大きな支援を今年も行なうことができました。お礼申し上げます。

いまだ福島の子どもたちの保養は行われていませんが久米島の子どもたちの声が響いています

沖縄・球美の里の声

〔10 月23、24日のブログから〕

◇島内の学童の子どもたち10名+大人5名が遊びにきました。
久しぶりに球美の里に子どもたちの歓声があふれかえっていました。
やはり、球美の里は子どもたちの歓声がよく似合いますね!
また遊びにきてくださいね。

◇「ファミサポ」で島内のお子さんが遊びに来てくれました。ピラミッドの中のたくさんのおもちゃで、いっぱい遊んでくれました。またおいでね!
詳しくは球美の里のブログをご覧ください。

沖縄・球美の里

新企画保養 募集中

a) 沖縄・球美の里(久米島) 子ども保養プロジェクト ファミリー保養募集中!

2022年春休みまで期間限定で、交通費の補助があります。
4泊5日 原則 1家族受入
※詳しくはたらちねこども保養相談所までお問合せください。

b) 「森林の分校ふざわ」ファミリー保養

福島県南会津郡只見町の「森林の分校ふざわ」は廃校になった小学校を利用した、宿泊施設です。
1泊2日または2泊3日

※詳しくは球美の里のホームページをご覧ください。
問い合せ窓口:たらちねこども保養相談所
TEL 0246-38-7173
FAX 0246-38-8322
mail)tarachine.hoyou@gmail.com

今福島で起きている問題、隠されていたPTSD

黒部 信一
(小児科医師・未来の福島こども基金代表・チェルノブイリ子ども基金顧問)

黒部信一ブログ

 福島でも沖縄と同じことが起きています。沖縄では家庭の中で戦争を語ることはタブーだったことです。1984年に一人の保健婦が沖縄戦に由来するPTSD(心的外傷後ストレス障害)や家庭内不和を報告したのに取り上げられず。2011年にある精神科医が「奇妙な不眠症」をきっかけに沖縄戦由来のトラウマに気付き、そこから沖縄戦のPTSDが知られました。それを見つけた蟻塚医師は沖縄から福島へ赴任し、福島でも同じだと気が付いたのです。そして福島の原発事故被害に対するPTSDは、蟻塚医師によって明らかにされました。沖縄で戦争を語ることと同じく、福島でも原発事故を語ることはタブーでした。

 11月3日に行われた「わかちあい練馬」のライブで歌ってくれた若者の一人が「10年以上前に行った沖縄南部の洞窟で解説してくれたおばあの話が忘れられず、歌にしました」と語ったのが沖縄の実情で、印象的でした。
福島でも同じことが起きています。福島市や郡山市などの多くの地域では、まだ事故の話ができないし、それに関連して家庭内不和も起きています。いわき市では市民放射能測定室たらちねが中心になって、原発事故被害を一部の人ですが語ることができているようです。しかし、強制避難者とそれ以外の人たちが補償金で分断されています。

今でも余震は続いていますし、原発も冷却し続けていなければなりません。硫黄島沖の海底火山の噴火で生じた軽石が11月下旬には関東沖に到達すると言われており、対策が問われます。

PTSDの人たちは、その度に昔のことを、今現在のことのように思いだしてしまうのです。そして時間の経過と共に「拾わなくてもいいトラウマを拾って傷口を広げ、トラウマ記憶を重いものにする」。しかも子ども期のトラウマの方が複雑化しやすいともいう。また「ライフサイクルの早期に生じたトラウマは、こころの成熟に根本的な影響を生じる」といい、「マルトリートメント(不適切な養育)」の解消を提唱する友田明美教授によれば「発達性トラウマ障害は、多動性行動障害へ発展する可能性がある」という。親が子どもの為に良かれと思ってやったことが、必ずしも子どもにとって良いことではなかったということもよくあるという。

福島にいる親たちを脅かしているのは、子どもたちの安全であり、それが全く保証されない以上、自分たちで守るしかないと考え、子どもに過度な干渉をしがちです。それによって~子どもたちのもって生まれた性格にもよるのですが~食物アレルギーや発達障害の発症を増やす一因にもなりかねません。その子どもたちが、将来いじめの対象になったり、不登校になったりしかねません。叱らない子育てが必要です。でも福島に住んでいる親たちは生きることに精一杯でそれだけの余裕が無い人たちがいます。

それで自由にのびのびと遊ばせることのできる場所での保養が大切です。「本当はお母さんもうるさく言いたくないんだよ」という場所が必要です。自由にのびのびとさせることとは無制限ではなく、孫悟空が世界の果てまで飛んで行ったと思っていたのに、実はお釈迦様の手の中から外へ出られなかったというように、親の手の中で自由にのびのびさせましょう。それにはいろいろと知恵や画策が必要です。小学校入学前までなら、関心をそらすことで対応できます。悪いことをしていたり、しそうになったらもっと面白そうなことに関心をすり替えるのです。叱っても体罰をしても、効果はないので、上手に子どもをほめて育てましよう。

叱らないことが親のストレスになるなら、回数を三分の一に減らしましょう。親だって人間ですから、そう我慢できません。でも子どもを扱うことに慣れると苦になりません。

親たちの悩みを話すことができる場所も必要です。家族単位だとその点が足りないかもしれません。

「福島原発事故災害から10年目のアンケート」結果のご報告

震災から10年の節目となった今年、大規模なアンケート調査を行いました。
当基金も実行委員団体としてこのアンケートの実施にかかわりました。

アンケートは選択回答と、自由回答がありますが、「原発事故に関連する精神的な不安」についての項目では、特に多くの自由回答が寄せられ、10年という月日がたっても原発事故の影響は大きいのだと改めて感じさせられます。
ごく一部になりますが、アンケートの結果をご紹介いたします。

Q14-1 福島県で実施している甲状腺検診と同じ検診をあなたの地域でも実施することを希望しますか。(福島県外在住対象)

  • 希望する 354
  • 希望しない 300
  • 無回答 133

合計787(名)

Q14-2福島県では、甲状腺検査は子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守ることを目的に実施していますが、事故後いつまで続けたらよいとお考えですか。(福島県内在住対象)

  • 10年でいいと思う 25
  • 20年は続けてほしい 59
  • 30年は続けてほしい 49
  • 生涯に渡って続けるシステムを作ってほしい 201
  • 無回答 14

合計348(名)

Q15 現在小・中・高校生は、主に学校での検診で検査を受けていますが、今後も学校検診が望ましいとお考えですか。(福島県内在住対象)

  • 学校検診が良い① 568
  • 学校以外の検診が良い② 103
  • ①と②の両方選択 19
  • 無回答 49

合計739(名)

Q21.福島原発事故に関連することから精神的に不安に感じていることはありますか。

  • 漠然と感じている➀ 385
  • 時々感じている② 319
  • 常に感じている③ 156
  • 感じない 152
  • よくわからない 60
  • ➀②③を選択 1
  • 無回答 65

合計1,138(名)

Q22「感じている」と答えた方、何について不安なのかお書きください。(一部抜粋)

  • 廃炉までの被爆される多くの作業員の方、放射性廃棄物質の最終処分問題
  • 事故を起こした側が事故をなかったことのようにしようとしている
  • 健康問題、当事者の生活問題、社会的差別問題、精神的諸問題
  • 原発事故後一週間位外で炊き出しをしていたため、外にずっといた
  • 女川原発の再稼働が迫りつつあるから
  • 食べ物、山菜やきのこなど時々食べていいか
  • 子どもが震災についてTVや報道に過剰に反応することについて
  • 10年後、20年後、30年後…子どもや孫の健康にどの程度悪影響が及ぶのかについて
  • 今後、20年、30年後の自分も家族もふくめ健康問題や結婚など
  • 避難された方達と地元住民の格差をいまだに感じる
  • 現在の放射線量。魚介類がほんとうに安全か
  • 数年検査して大丈夫だと国が判断して検査やケアを止めてしまうのではないか
  • 今後の福島はどうなるのか??ここに生まれ住んでいる子ども達は将来差別されるようなことがあるのか
  • 健康被害について、もし被害が出た際に、原発由来と証明できるのか
  • 慣れがこわい
  • 町が帰町する方向の政策ばかりで、避難先の支援をしないことについて
  • 負の遺産をこのまま放置し、それが子ども達に影響するかもしれないこと。風化どころかコロナでふきとびそう!
  • 原発の再稼働へと国が動いていること

こちらにご紹介できたのは、一部です。本当にたくさんの声が寄せられています。
ぜひ、「認定NPO法人いわき放射の市民測定室 たらちね」や当基金のホームページより集計結果をご覧ください。

ミニ情報

市議会議員当選おめでとう!

未来の福島こども基金の活動を開始したのは2011年6月。そのときの設立メンバーでもあった高木章次さんが、鹿児島県いちき串木野市市議に当選しました。高木さんは2014年に東京からいちき串木野市に移住。川内原発再稼働反対などの市民活動を九州でも続けてきました。今月19日に無投票になると知り、選管で書類をもらってきて考え始め、迷いに迷った結果、告示日24日の前日の夜9時に立候補を決めたそうです。通信のイラスト、イベントのポスターや横断幕作成など、多くの市民団体が高木さんを頼りにしてきました。「今後、議員活動と市民運動の両方をするつもり」と、ご本人の弁です。脱原発に向けて共に進みましょう。(向井)

川内原発再稼働反対ポスター

お酒の話

よく酒飲みに、「休肝日を作りなさい」と医師や栄養士は指導します。本当に誰でも休肝日が必要でしょうか。というのは、日本ではお酒に弱い人が約40%で、残りの60%はお酒に強いのです。世界で東アジア人に弱い人が多いのです。それはアルコール分解酵素を遺伝的に持っているかどうかにかかります。アルコールを最終的に分解するアルデヒド分解酵素(活性型)を、白人も黒人も100%の人が持っていますから、昼間からワインやビールを飲むことが多いようです。

アルデヒド脱水素酵素が変異している不活性型の遺伝子を1個持っていると酒に弱く、2個とも不活性型だと全く飲めません。世界で新モンゴロイドだけがこの不活性型をもっており、日本人はその遺伝子を持っている率が約44%と高いです。
お酒を飲んでも顔が赤くならない人は、不活性型を持っていないので、飲んでも肝機能は悪化しません。お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人は1個持っていて、飲んでいるとだんだん強くなりますが、飲むと肝機能も次第に悪化しますから、休肝日が必要です。

この遺伝子は旧モンゴロイドにはないので、モンゴロイドの拡散のルートを追跡した調査もあります。主に東アジアに多いようです。ある統計では中国人50%、ベトナム人57%、タイ人10%、韓国人28%と言いますが、検査数が少ないので正確ではありません。
あなたがお酒で顔が赤くなるなら、やはり休肝日は必要です。ならなければ楽しみ程度に飲めばよいと思います。(黒部信一)

会計報告 2020年6月1日~2021年5月31日

会計報告 2020年6月1日~2021年5月31日

❖ 4月にNo.21を発行しましたが、その後の発行が遅れましたことお詫びします。昨年度の会計報告は当基金のwebページにおいて、すでに報告しておりますが、あらためて紙面に掲載しました。コロナ禍にもかかわらず、たくさんのご寄付をありがとうございます。

❖福島原発事故から10年、チェルノブイリ事故から35年の今年、フォトジャーナリスト・豊田直巳さんのオンライン講演会が4月24日、チェルノブイリ子ども基金と当基金の共催で開かれました。当日は175名の方が参加されました。パルシステム東京さんの全面的な協力により、講演会の動画がYouTubeにアップされています。https://www.youtube.com/watch?v=FGoLzIbEOTU
豊田さんの動画にも登場した飯舘村の長谷川健一さん(68歳)が10月に甲状腺がんで亡くなられました。架設住宅から飯舘村に通い、そば作りを昨年から始めた、まだまだ売れないが農地保全のため、除草して植えて種をとり、今年も植えたという話を聞きました。ほかにもこの1年で、何人もの方々が亡くなっているとのことを福島の知人から聞きました。

❖チェルノブイリの子どもたちの保養はコロナ禍においても開かれています。ウクライナ、ベラルーシでの夏休み保養についてはチェルノブイリ子ども基金のwebページをご覧ください。https://blog.goo.ne.jp/cherno1986jimukyoku
チェルノブイリ子ども基金 制作の2022年版チェルノブイリ救援カレンダーが完成しました。毎年、収益の中から、福島のこどもたちにもカンパをいただいています。チラシを同封しました。見開きでA4サイズというかわいらしい形です。ご協力をお願いします。

❖12月11、12日郡山において「震災後10年 紡ぐ子どもの未来」と題したイベントが開かれます。ノンフィクション作家の柳田邦男さんや他の方と一緒にたらちねの鈴木薫さんもシンポジウムに参加されます(2日目)。

主催:日本乳幼児精神保健学会 設立記念郡山退会実行委員
共催:日本大学工学部、郡山ヘップ子育てネットワーク、ハートフルハート未来を育む会、いわき放射能市民測定室たらちね

「震災後10年 紡ぐ子どもの未来」
郡山大会の詳細はこちら

未来の福島こども基金 規約

1、本会の名称 :「未来の福島こども基金」
2、目的: 福島原発震災に遭った被災者を支援するため、情宣・募金活動を行う
3、会費 :3000 円、学生会員 2000 円、維持会員 1 万円の年会費を納入する*
4、役員: 代表 1 名、若干名の世話人をおく。世話人の中から会計、監査を選任する
5、会員はそれぞれ可能の範囲で創意工夫して自由な支援活動を行う
6、本会は印刷物、メール、ネット、等の媒体を通じて適宜活動報告を行う
7、毎年 1 回、総会を開き、事業および会計について報告する
8、事務局:353-0006 埼玉県志木市館2-3-4-409 向井方
〈問合せ〉Tel:090-3539-7611 Mail:fromcherno0311@yahoo.co.jp
9、活動開始:2011 年6 月1 日より(会計年度6 月1 日より翌年5 月31 日まで)

※会費には寄付金も含まれる
※経費は募金額の1割以内をめどとする。当基金は任意団体です。

継続支援のお願い

引き続きのご支援をお願いします。すでに振り込まれた方はご容赦ください。振込用紙付きチラシを一律に同封させていただきました。
また、チラシをまわりのかたに広めていただける場合、枚数をお知らせください。お送りします。どうぞよろしくお願いいたします。

寄付金、会費の振込先

郵便振替口座
振替口座: 00190-0-496774
口座名: 未来の福島こども基金
他の金融機関からゆうちょ銀行へお振込の場合
店番 : 019
店名 : 〇一九店(ゼロイチキュウ店)
預金種目 : 当座 0496774

三菱UFJ 銀行 神楽坂支店
支店名: 神楽坂支店(支店番号:052)
口座名: 未来の福島こども基金
口座番号:普通口座0064011

海外から送金の場合 – Remittance from Overseas
– Remittance from Overseas
BENEFICIARY’S BANK/ACCOUNTBANK:
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