ニュースレターNo.5を発行しました!

ニュースレターNo.5

未来の福島こども基金のニュースレター「from chernobyl」の第5号を発行しました。
今回はいわき放射能市民測定室たらちねで進められている甲状腺検診プロジェクトの報告や市民測定所からの報告を特集しています。 ニュースレターはこちらからダウンロードできますので、みなさま、ぜひご覧になってみてください!

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未来の福島こども基金ニュースレター
from chernobyl No.5
チェルノブイリから学び、子どもたちを守る

 

未来の福島こども基金 総会 & ウクライナ・チェルノブイリ被災者のお話

甲状腺検診プロジェクト
プロジェクトがスタート
「たらちね」からの報告(たらちね 事務局長 鈴木薫)

市民測定所から
NPO法人 CRMS市民放射能測定所福島
あぶくま市民放射能測定所
YCRMS 横浜市民測定所
市民放射能測定所 郡山測定所
しらかわ市民放射能測定所「ベク知る」
みんなの測定所ふじみーる
みんなの放射線測定室「てとてと」
NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね

沖縄・球美の里 一周年目の総会 報告

子どもへの低線量被ばくの影響(小児科医 黒部信一)
(1)被ばくした本人への影響 … 身体的影響
(2)子どもへの放射線の影響
1.放射線への感受性
2.内部臓器に達する線量
(3)被ばくした人の子孫への影響 … 放射線の遺伝的影響
1.遺伝子突然変異
2.染色体異常
3.集団と遺伝
(4)胎児への影響(子宮内被ばくの影響)… 先天的影響
1.主たる障害
2.白血病および小児がんのリスクについて
放射線の発がん性

会計報告(2012年6月1日~2013年5月31日)
寄付団体名

ひろがる取りくみ
チャリティ展覧会「ちくしの会」
パリで書展開催
StudioBPMForJapan
『CD絵本 空より高く』
ドラゴンプロジェクトin南相馬

未来の福島こども基金 規約

 

2011年6月に活動を始めてから2年。いつもあたたかいご支援を賜り感謝申し上げます。これまでの活動報告と今後の支援について、みなさんと意見交換させていただけましたら幸いです。また、ウクライナからチェルノブイリ原発事故の影響で甲状腺がんになり、昨年30歳で亡くなった息子ミーシャさんの父親シテフォルク・ワレンチンさんが来日します。福島原発事故民衆法廷*で特別申し立て人の一人として意見陳述されます。ミーシャさんは、当基金の姉妹団体であるチェルノブイリ子ども基金が支援していましたが、がんが転移し、亡くなられました。
チェルノブイリのいま、そして教訓をおうかがいする貴重な機会、ぜひお誘いあわせのうえお越しください。

【日時】2013年7月19日(金)
18:30 開場 19:00 開始
1部 未来の福島こども基金総会
2部 シテフォルク・ワレンチンさんのお話(通訳竹内高明さん)
【会場】カタログハウス・セミナーホール(地下1F)
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-12-2
JR新宿駅南口から徒歩約8分。
改札を出て甲州街道を初台方面に進み、3つ目の信号を左折。約150メートル先左手の白いビル

*原発を問う民衆法廷
7/20(土)13:00~18:00
7/21(日)11:00~17:00
場所:新宿区箪笥区民ホール
(都営大江戸線牛込神楽坂A1出口徒歩0分)
参加費:1日券1000円・2日通し券1800円
連絡先:090-2466-5184(矢野)
FAX045-434-4225
http://genpatsu-houtei.blogspot.jp/


子どもの甲状腺がんを心配する市民の要望に応え、NPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」で、甲状腺検診プロジェクトがスタートしました。
検診で使用する器械2台は当基金ほか団体・個人が支援しました。検診にあたるのは、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道さんや、島根大学教授の野宗義博さんほか専門家の方々です。
検診は3月16日からはじまり、オープニングセレモニーの開かれた17日とあわせた2日間で90名が参加しました。
検診はひと家族ずつ個室に呼ばれ、小さい子どもは親に抱っこされ、怖がることもなくエコー検査を受けていました。検診後には「異常なしの結果に安心しました」と話す家族の声も聞かれました。検診はその後も4月から5月にかけて、いわきや郡山、二本松など福島県内各地でおこなわれ、すでに1000人以上が受診しています。

そんななか、6月5日には福島県の県民健康管理調査の結果が発表されました。それは事故当時18歳以下だった子どもから、あらたに9名の甲状腺がんが見つかり、合計で12名となり、さらに15名にがんが疑われるというショッキングなものでした。甲状腺がんの治療には早期発見が重要ですが、県の調査は対応が遅く、3月末時点で対象者の半数以下にしか実施されていません。

「たらちね」の検診プロジェクトは、希望者がより短い期間で定期的に検診を受けることができるように進めていく予定です。

検診を始めて3か月、多発性のう胞が多いことが心配であると「たらちね」からの報告です。


福島原発事故の時に、多くの子どもたちが被曝し、その詳細な様子が少しずつ学者のシュミレーションなどで明かされている。セシウムだけでなく、今は測定が不可能なヨウ素131についても、大量に放出されたことが爆発後のデータから知ることができる。
この初期被曝により、子どもの健康が侵される心配から、たらちねでは多くのみなさんのご支援をいただき「甲状腺検診プロジェクト」を開始した。2012年7月から「沖縄・球美の里」で行っていた検診を継続する形で、2013年3月17日にオープニングを行い、6月までの3か月間で約1000名以上の子どもの検診を行った。検診担当の医師は、病気の早期発見と早期治療を目的とした人道支援に賛同してくださっているボランティアで、それぞれの仕事の合間の日程で遠方から福島に通って来ておられる。
検診に立ちあってみて、多発性のう胞が多いこと、年齢的には幼い子どもよりも外での活動が活発な小学校高学年から中学生に多いことを実感した。土に交じったセシウムを吸い込むことからの影響もあるのかと心配になった。子どもたちが長い時間過ごす学校では、放射能に対する厳しい防護の決まりはほとんどない。無防備な中で、このまま、子どもたちが被曝を重ねていくのかと考えると、防護のための早急な対応が必要であると感じる。
検診プロジェクトは、今、それぞれの多様な状態のデータを細かいデータベースに打ち込む作業を行っている。県立医大のようなA1、A2、B、C、というような簡単な分け方はできないのが本当のところである。医大の発表では27名の子どもたちがガンおよび疑いがあるとのことだった。
このまま、子どもを守らない状態が続くと、ますますその数は増えると考えられる。大人が本気で子どもを守る社会にいつになったらなれるのか?
子どもの健康被害は待ったなしだということを真剣に実感しなければならないと思う。

NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね
事務局長 鈴木薫

NPO法人いわき放射能測定室たらちね
2011年11月に開設。地元いわきに根ざした測定室として活動の幅を広げ、「沖縄・球美の里」のいわき事務局としての役割も果たす。当基金はこれまでに、DAYS放射能測定器支援募金と共に2台の食品測定器と1台のホールボディカウンターを、そして今回、甲状腺超音波診断機を支援している。
定休日 毎週木曜日・日曜日・祝祭日
開所時間 10時から16時
直接来室予約受付時間 11時から15時
T&F 0246-92-2526
〒971-8162 福島県いわき市小名浜花畑町11-3F

◎甲状腺検診について
費用:無料
対象者:生後3ヶ月位(首の座った状態)以上の子どもを優先
申込み方法:
A.測定室窓口で「甲状腺検診申込書」に直接記入
B.「甲状腺検診申込書」に記入してFAXまたは郵送
C.電話で申し込む

詳しくはたらちねのホームページhttp://www.iwakisokuteishitu.com/をご覧ください。


市民測定所から未来の福島こども基金はこれまで7か所の市民測定所に測定器を支援しました。原発事故から3年目を迎えたこの春、各測定所からこれまでの活動の成果と、今後の課題について報告いただきました。

各データは、1.測定器機種、2.測定数(検体数)、3.利用者、4.測定対象品(検体)です。

開所から2年、食品測定とともにホールボディカウンターによる測定を通して、生活全般にわたる総合的な被曝防護の提言をしてきました。食品測定については、詳しく1Bq/Kg程度まで測れるゲルマニウム半導体検出器による測定依頼が多く来るようになりました。利用者に消費者が多いため、ハウスダストの測定など生活に密着した測定に取り組んでいます。ホールボディカウンターについては、福島県内の20歳未満の子どもや妊婦の方は無料で受け付けていて、毎月50人ほどを測定しています。自給率の高い人の体内被ばくの値が若干高いなど気になるデータがありますので、それをきちんと追いかけていきたいです。

NPO法人CRMS市民放射能測定所福島
〒960-8034福島県福島市置賜町8-8パセナカMisse1階
http://crms-fukushima.blogspot.jp/

1.AT1320A、FNF-401、ゲルマニウム半導体検出器、WBCのAT1316
2.AT1320Aは月平均5件、ゲルマニウム半導体検出器は月平均50件。WBCは月平均50人
3.食品測定の依頼は消費者が7割程度と多く、WBCは8~9割が子ども

20130315_福島市_NPO法人CRMS福島_DSC_2601
CRMS福島理事長の丹治宏大さん


これまでの測定から放射性物質が入りにくい作物や、作付の方法が分かってきました。また調理方法によっても放射性物質の量を減らせることが分かってきています。それらの情報を多くの人に知ってもらうよう努めています。
有機農家として、原発事故後は育てた作物を測定し、その結果を公表して、納得していただいた方に販売するということを実践してきました。いま地域の生産者の方々と新たなお店「えすぺり」の立ち上げをしていて、そのお店でもセシウムのデータを表示するため、測定器を有効に使いたいと考えています。

※アニメーションをご紹介します。作者はアメリカの美術大学に留学中の大河原さんご夫妻の娘さん・ひかりさん。実家のある福島の現状を知り、なにかできないかと考え制作したそうです。伸さんは避難した3月15日を忘れないために、毎月15日になるとフェイスブックで「シェア」しています。ぜひご覧ください。
InvisibleThreat:Fukushima2011(日本語字幕付き)
http://vimeo.com/52929617

あぶくま市民放射能測定所
〒963-4204福島県田村市船引町堀越字原166-1かぼちゃ小屋、
http://ichikaraya.web.fc2.com/(壱から屋)

1.AT1320A
2.月平均20~25件。季節によってばらつきがある
3.近隣の生産者が多い
4.季節にとれる野菜や山菜、加工品などの測定が中心

20130316_田村市_あぶくま市民放射能測定所
お話を聞かせてくれたのは大河原多津子さん。農閑期には夫の伸さんと人形劇団を主宰している。


1年間の測定の成果として、まず、食品汚染のだいたいの傾向がつかめてきたことが大きいです。どのような食品にセシウムが残りやすいのか(山菜、きのこ、淡水魚等)は、チェルノブイリの事例ともやはり一致していますが、自分自身でも確かめられました。その他の食品については、産地にかかわらず、栽培方法や加工経路で汚染が検出されることはあるため、信頼できる顔の見える食品を選ぶことが必要です。その一方で、チェルノブイリでは経験のない海の汚染がこれからどのように広がっていくのか、まだまだ監視が必要だと思っています。このような市民目線の測定結果を共有していくことで、不必要に東北のものを避けることなく、正しく食品を選ぶ目を養っていくことができるというのが、1年間測定してみて実感している成果です。

横浜市民測定所
横浜市磯子区磯子、相模原市南区東林間
http://www.ycrms.net/

1.AT1320A(3台)
2.月あたり平均71件。これまでの合計では約1000件
3.家庭の主婦が大半。
4.一番多いのは米、続いて小麦粉。加工品は幅広く、特にズバ抜けて多いのはない


たくさん検体を測定したことで、放射能が出やすいものや、出やすい場所が、少しずつですが分かってきました。
心がけていることは、整理整頓を徹底することと、依頼者の方に専門用語などは使わずにわかりやすい説明をすることです。自分が素人から始めたからこそ分かる、依頼者の方の気持ちを考えて対応するようにしています。

市民放射能測定所 郡山測定所
福島県郡山市片平町字中町 にんじん舎かたひら農場中町作業所内
http://www.crms-jpn.org/

1.AT1320A
2.月平均15件
3.近隣の老人ホームや幼稚園の方々
4.季節の作物が多い


測定を通して、消費者や販売者に安全と安心を与えることができたと考えています。また、山菜、野生きのこ、たけのこに高い汚染が見られることについて発信しました。これまでに行った実験から、白河市や西郷村の土壌では火山灰に由来するアロフェンという粘土が多く、セシウムがその粘土に吸着されたために、野菜にはあまり移行しないことが見えてきました。土壌や作物の種類によって汚染に差があることが分かり、それを、測定所を訪れる人々に伝えることで、どのように放射能と向き合って暮らしていけばいいのか具体的な提案をしています。

しらかわ市民放射能測定所「ベク知る」
〒961-0905福島県白河市本町2マイタウン白河2F
http://www.geocities.jp/bekushiru/

1.AT1320A
2.月平均46件。季節によってばらつきあり。春から夏にかけて多い。昨年5月が最も多く70件。冬はとれる作物がないので依頼も少ない
3.生産販売者よりも消費者の方が若干多い
4.季節の作物が多い


全国各地から掃除機のごみパックを集めて測定キャンペーンを行いました。結果は東日本のごみパックからはセシウムが検出され、西日本のごみパックからは検出されないというものでした。ごみパックを測定することで簡易的にその地域の汚染度を推定できると考えています。
独自に作成した鉛遮蔽容器によって、今では同じ測定器を使用している測定所に比べて低い検出下限値を実現しています。

みんなの測定所ふじみーる
埼玉県富士見市羽沢
http://fujimi-ru.greenwebs.net/

1.AT1320A
2.月あたり平均36件
3.女性の消費者が多い。測定の半数はスタッフによる自主測定
4.食品全般。ごみパックをキャンペーンで測定


宮城県は市民測定所が少なく、行政の測定所は測定時間が短いため検出下限値が高く、測定報告書体制も十分でないため、きちんと測定のできる市民測定室がここにあることで地域の人に安心してもらっている部分があると感じています。
昨年(12年)の夏から始めた「てと市」では、自分たちでつくった作物を測定してその結果を表示して売っています。生産者と消費者が信頼しあえる方法を示す試みとしてこの「てと市」には意味があると思っています。
農家にとってどういう資料を提供できるかを考え始めています。農家も安全な作物をつくり、安全な作業現場で働きたいと思っています。これからは作物の測定だけではなくて、圃場の測定をやっていかなくては、農業現場は本当の解決に向かって行かない、その辺りのすごく大きな仕事が残されていると感じています。

みんなの放射線測定室「てとてと」
〒989-1241宮城県柴田郡大河原町字町200番
http://sokuteimiyagi.blog.fc2.com/

1.AT1320A、EMF211、AT1125
2.月平均約200件。
3.近くの青果市場に出荷している生産者の方々、自然食品店、地域の自家菜園の方々、スタッフの自主検体など(宅配便を利用して検体を送る遠隔地の方も多い)。
4.季節の作物中心。土壌、薪の灰、野生動物の肉、魚、コイン精米所の米ぬか測定(環境調査目的)、農家の圃場とコメ測定(農業環境調査目的)

20130315_宮城県大河原町_みんなの放射線測定室・てとてと_DSC_2588
運営委員の一人の北村保さん。

※みんなの放射線測定室「てとてと」は未来の福島こども基金が測定器を支援した測定所ではありませんが、ご縁あって協力関係を築くようになりました。


最近、目につくのは土壌の測定データです。他県から送っていただいた砂浜の測定値といわき市の砂浜の測定値では桁が2桁違います。また、市内でもクールスポットのようなところがあり、そこの測定値は他県と同等の値です。いわき市は被曝をまぬがれたように言う人もいますが、そうでないことが分かります。食材の測定は2012年度、2574件測定し、前年度と比較して値は上がったり下がったり一進一退です。半減期が30年のセシウムの影響が簡単になくならないことを実感しています。子どもたちを守るため、小さな数字にもこだわって行う測定のスタイルは開所時から変わらず続けています。これからもがんばりたいと思います。

NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね
〒971-8162福島県いわき市小名浜花畑町11-3
http://www.iwakisokuteishitu.com/

1.AT1320A(3台)、LB2045、AT1316
2.月平均250件程度。WBCは月平均200人程度
3.食品測定は地元の人が多い、WBCは大半が20歳未満の子ども・未成年者


NPO法人「沖縄・球美の里」はまもなく1周年を迎えます。

6月15日、東京で総会が開かれました。久米島事務局長の川口直美さんからは、子どもたちの保養の様子が映像をまじえて報告されました。

子どもたちの笑顔
朝6時半から就寝する夜9時までの日常のスケジュールを紹介。起床後まず、掃除、その後子どもたちも配膳を手伝いながら朝食。午前は自由時間だったり、午後はさまざまなプログラムが組まれている。ハテの浜やイーフビーチでの海遊び。川遊びやホタル館で、ヤギや小動物との触れ合い。久米島町役場あげての協力体制、島のお母さんたちの食事作り、食材の提供など、島の人たちの協力のほかに、重要な役目を負っているのはボランティア。おかげで、子どもたちがのびのびと安心して過ごすことができる。

免疫を高めるために
思いっきり遊ぶこと自体が免疫を高める効果がある。それ以外に、安全な食材、島の食材をできるだけ使う。放射能測定器(*)が施設内にあるので、放射能検査をして不検出の食材を使うようにしている。セラピストの人たちがボランティアとして毎回参加。子どもたちはリラックスしてマッサージを受けている。久米島沖の深海から取水された海洋深層水を100%用いた健康・元気促進の施設「バーデハウス」のプールにも子どもたちは入ることができる。保養にきて、原因不明の湿疹が消えたという子どもが何人もいる。*DAYS放射能測定器支援募金と共同で贈りました。機種は、ADANIRUG-91-2(ベラルーシ製)。
また、ボランティア医師と久米島病院の協力のもと、子どもたちの甲状腺検診を実施した。

その他
シーサー作り、三線(サンシン)教室、沖縄ことばでのお話会など、島の文化にも触れられる。島全体が壮大なセラピーの島です、と川口さん。子どもたちの島での様子をほぼ毎日ブログで伝えていて、家で待っているお母さんたちには、雰囲気がよく伝わり安心できる、と好評のようです。球美の里久米島事務局ブログhttp://kuminosato.blog.fc2.com/

みなさまのお手元にニュースレターが届くころ、第13次の保養が始まります。保養の募集については球美の里・東京およびいわき事務局のホームページをご覧ください。

川口さんのあと、いわき放射能市民測定室たらちねの事務局長鈴木薫さんからの報告。本誌でも何度か掲載していますように、食品の放射能測定、ホールボディカウンターによる測定、そして子どもたちを保養に送りだす窓口として、たらちねは日々忙しく重要な仕事をこなしています(p2-3を参照)。 「今、子どもたちの喜んでいる様子をみて、福島にも2年前までは久米島と同じような状況があったと思う。外で活動する小学生高学年、中高生の体内被ばくが心配されている。例として、本宮市ではガラスバッジを子どもたちにつけさせているが、高い子どもは5mSvにもなっていると最近聞いた。保養に対する認識が高まっているように思う。ただし、田植えどきなど、時期によっては子どもたちが集まりにくい。インターネット人口が福島は少ない。広報に努力したい」(※保養できる子どもたちは福島だけに限りません。周辺の被害地域も含まれます)

最後に広河隆一球美の里理事長よりあいさつがありました。「これまでの1年間は奇跡に近い。全国の保養施設は久米島を見ている。北海道では間もなく保養施設がオープンする。やがて政府も加わって保養の予算がおり、そのお金を使えるようになる……。その間、1年は過ぎたが今後どのように進めるか? 幸いにまだ、お金は残っている。スポンサー、ボランティア、久米島の人たちに感謝して今日の会を終わりにしたい」

1年間の保養参加者とボランティアの数
newsletter-no5-hoyou-sankasha
NPO法人沖縄・球美の里2013年度総会資料より作成


小児科医 黒部信一

低線量被ばくによる障害には、時間が経ってから起きる晩発性障害、遺伝的障害、それに先天性障害があります。そして、外部被ばくと内部被ばく(体内に入り込んだ放射性物質が、体内で発する放射線による被ばく―吸入と飲食物の摂取による)があります。

一回の一ミリシーベルトの被ばくで、一本の放射線が体内にある全身の六〇兆個のすべての細胞を通過します。一マイクロシーベルトでは六〇億個の細胞を通過します。通過する際に細胞内の核にあるDNAを切断することがあります。DNAの切断には、一本の放射線で一カ所切断し、その結果、障害を起こします。DNAは体細胞では、一細胞中に三二億塩基対があり、三塩基が二〇種のアミノ酸を指定しています。そのため塩基間の切断によって、さまざまな病気が発生します。詳細は判っていませんが、現実にチェルノブイリで被ばくした子どもたちは、いろいろな症状を訴え、脳神経系、免疫系、内分泌系、筋骨格系などいろいろな病気になっています。

今まで放射線の影響は、「発がん性(白血病、がん)と寿命短縮、老化現象の促進」と言われてきましたが、それ以外の障害があることが、チェルノブイリ事故後の健康調査などで判ってきました。だから、被ばくすれば体のすべての場所のどこかに障害が起きてもおかしくないのです。しかし、機能的な障害は数値化できず、症状として出ても放射線の影響かどうかが判らないために、発がん率で代表して表現しています。発がん率は微量でも蓄積されて、確率的に出ます。

ベラルーシの元ゴメリ医科大学長で病理学者のバンダジェフスキー著『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響』(合同出版、二〇〇〇年)には、死亡者の臓器別の測定では、放射線の蓄積は、甲状腺、骨格筋、小腸、心筋、脾臓、脳、腎臓、肝臓の順でした。機能的には、心臓血管系に強く表れ、腎臓、肝臓などの機能の不調、肝硬変。免疫系では、感染への抵抗力の低下、造血系、女性の生殖系、内分泌系の乱れ、甲状腺の機能の異常を生じ、甲状腺がんも増えます。神経系では、大脳左半球の異常。視覚器官では、白内障、屈折異常を生じるなど、ほとんどの器官の機能異常や障害が起きることが本書に書かれていました。

人は細胞分裂で新陳代謝を行い、そのときにできた傷害部位の修復を日常的に行っています。細胞分裂のたびに、一〇億塩基対に一回くらいの間違い(突然変異)、つまり体細胞では三カ所くらいの間違いが生じます。そのうえ、紫外線、放射線、化学物質などの影響を受けて余計に突然変異を生じます。DNAの切断は、修復される場合と、間違って修復される場合、全く修復されない場合があります。間違いの監視機構と修復機構が働いて、間違いを修復し、修復できずに生じた欠陥細胞は破壊されます。このシステムが免疫系です。この監視機構が働かないか、突破されたときに病気になります。

子どもでは、成人よりも放射線被ばくによる影響が大きいのです。主に次にあげる理由によります。

子どもの放射線に対する感受性は、乳児から思春期までを平均して、成人の一〇倍です。その理由は、細胞分裂が盛んであること。特に胎児や乳児はそれだけ急速に成長発達するからです。次に、生存期待年数が長い(これから生きていく年数が長い)ことです。

女児は男児より感受性が高い。それはヒトの卵母細胞を出生時二〇〇万個持っているからです。そのうち、成熟しないもの・欠陥があるものが脱落し、次第に減少し四十五歳頃には三万四〇〇〇個くらいに減ります。精子は一回の射精で五億個あり、その半数は欠陥をもっていますが、正常な精子が競争に勝って、受精します。間違って欠陥のある精子が受精すると、流死産することが多いし、もし生まれても新生児期、乳児期に死亡します。

外部被ばく線量が同じである場合、成人より子どものほうが、内部に到達する放射線の周囲組織(皮下組織、脂肪、臓器の周囲組織)による減少が少ないため、内部臓器に達する線量が高くなり、障害が出やすくなります。その結果、放射線による生物学的影響、つまり細胞機能の低下、細胞分裂の遅延、染色体の異常、細胞の死は、子どものほうが大きいのです。

遺伝子の突然変異で、微量でも蓄積されて、確率的に出るのは、体細胞と同じです。でも日常的には、生殖細胞一個に起きる塩基の複製の際の間違いは六〇〇万カ所にのぼり、子孫に伝えられていきます。すべての細胞で一〇〇〇塩基に一個くらいの塩基の置換、欠失・挿入などの突然変異が起きています。そこに放射線の影響が加わります。

突然変異率は、被ばくする生殖細胞の発達段階、吸収線量、線量率などにより異なります。

発生頻度は高くありません。それは、染色体の切断部位の再結合による修復が可能なためと考えられています。

個人としては極めて低い線量であっても、集団全体が個々として浴びれば、集団の大きさに比例して、特定の個人に対する影響が生じる確率も大きくなります。

小頭症、精神知能発達障害、発がん性、染色体異常が知られていました。放射線のリスクは、器官形成期と胎児期の初期、受胎後二十五週間までが、放射線に対して敏感であり、特に中枢神経系の感受性が高く、その時期を過ぎると低くなっていきます。妊娠四~六カ月ではいくぶん小さくなり、七カ月以降では最も低くなります。

妊娠のほぼ全期間を通して、胎児は小児と同程度に潜在的誘発効果があると推定されます。小児がんの自然発生率は約〇・二~〇・三%と低く、約一〇ミリシーベルトという大量の胎児被ばくでの相対リスクが一・四倍ですから、子宮内被ばく後における個人レベルでの小児がんの確率は小さいですが、集団レベルでは別です。

すべての臓器のがんが、放射線により誘発されます。臓器別の発がん率は、自然の発がん率に比例します。そして同じ線量では、成人より子どものほうが、がん死亡率が高いのです。被ばくしたときの年齢が一年違えば同じ線量では若い人のほうが発がん率が高くなり、特に二十歳以下であったかどうかが大きな決め手になります。

そして、女性より男性のほうが、発がん率が高いです。これは自然発生のがんに比例するためです。累積線量―放射線の発がん率は、累積します。ただし、線量を累積するのではなく、被ばくした各年齢での、発がん率を累積していきます。女性は、被ばく線量と乳がん発生の相関があるので、乳がんが重視されています。子どもの被ばくによる乳がんは、他のがんより早く出現します。甲状腺は、がんおよび良性腫瘍などが誘発されます。甲状腺がんは腫瘍発生率とがん死亡率の差が大きく、死亡率が低く、先進国での甲状腺がんの死亡率は、二~三%前後です。

特に十歳以下は甲状腺がんと甲状腺腫の増加が大きく、早期発見が大切です。チェルノブイリでは、発見の遅れから、甲状腺がんの子どもの二五%以上は、既に転移があり死亡しています。

潜伏期は、胎児が被ばくした場合は、被ばく後一年以内に白血病をはじめとしたがんが現れます。乳幼児期の白血病とがんの発生は、被ばく後一~三年から出始めます。放射線のがんは線量依存性があり、しかも、他のがんより急速に発達します。

二〇一三年二月、福島県の「県民健康管理調査」検討委員会は、十八歳以下の二人に甲状腺がんが見つかったと報告し、二〇一二年九月の一人と合わせて、計三人となりました。これを放射線によるがんか、既にあったがんが検診によって早期に見つかったのか、意見が分かれています。これの判断は、社会的・政治的になされています。

このように、医学という学問は、社会的に左右されています。そういう意味では、アメリカのヘンリー・H・シゲリスト(一八九一―一九五七年。医学史研究者)、日本の白木博次博士(一九一七―二〇〇四年。東京大学元医学部長、神経病理学者)たちが言うように、医学は社会科学かもしれません。だから、原発事故の健康への影響について、意見が分かれているのです。

初出:「子どもへの低線量被ばくの影響『教育と医学』2013年5月号(慶應義塾大学出版会)より抜粋


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継続支援のお願い

会員のみなさま、引き続きのご支援をお願いします。
すでに振り込まれた方はご容赦ください。振込用紙つきチラシを一律に同封させていただきました。チラシにも書いてありますが、従来の「チェルノブイリから日本を考える会」から「未来の福島こども基金」に口座名が変更になりました。かねてから申請していたものです。以前のチラシをお持ちの方は訂正して使ってください。番号は同じです。

※ご自身の口座に「チェルノブイリから日本を考える会」の名前で登録されている方は「未来の福島こども基金」に変更をお願いします。

また、チラシをまわりのかたに広めていただける場合、枚数をお知らせください。お送りします。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局:353-0006埼玉県志木市館2-3-4-409向井方
Tel:090-3539-7611
Mail:fromcherno0311@yahoo.co.jp

(2012年6月?2013年5月。敬称略。紙面の都合により団体名のみ記載)

ACT21/AikidoClubduVald’Europe/CUBE BAR&LATHRILIS/DVD上映会新座/FukkOBU/IbizaStyle/MinusInc/LoicKERISIT/LoveforJapanBangkok/NPO法人チェルノブイリ医療支援ネットワーク/StudioBPMNYC/WE21ジャパンおだわら/WEショップおだわら城山店/you2/YU-ENLLC/アースランクラブ/愛知映画祭東北物産展協力団体/愛農学園農業高等学校生徒会/秋山眼科医院/新しい風/あやカルチャ/アレルギーっ子の食を考える会/安心して住みたい愛知/飯田弁護士事務所/家田整形外科皮膚科クリニック/市川学園第2幼稚園おひさまの会/いのちと未来を守る大集会実行委員会/ウォーターマークアーツアンドクラフツ/臼田歯科医院/大磯ステパノ自然エネルギーによる電力自給をめざす会議/オーガニックハウスあさのは屋/おおつか小児科アレルギー科クリニック/沖縄酒家てぃーだのお客様から/沖縄よりいれい先生をお迎えして宮城県参加者一同/核燃とめよう会/カトリック門司教会/カリーナ/環境調査センター/絆ジャポン/帰農志塾/九条の会三条/くしはらささゆりクラブ/群馬中国医療研究協会/ケイ歯科クリニック/原発井戸端会議/小池音楽教室/古書のウェブショップリーディングッド゙/ことばのポトラック/子どもたちを放射能から守る「練馬ネットワーク」/子どもの未来社/ころぼっくる/5年後10年後子どもたちが健やかに育つ会足柄支部/さいほうクラブ「すいせん」/桜井書店/桜台横笛会/「さよなら原発」ステッカーの会/3.11に灯すあかりLAMP実行委員会/自然エネルギー推進ネット・光/島尻自治会/城南信用金庫/新日本婦人の会八千代支部かつた班/すえひろ会/ストッププルトニウム神奈川連絡会/昴有志一同/パルシステム東京/聖心会 三光町キャンパス/世田谷市民大学聴講生有志/泉称寺「いなべ親鸞塾」/創生会真岡西部クリニック/そらとも/「空と海の間に」チャリティライブ/脱原発映画とお話の集い/楽しみま書道教室パリ支部/チェルノブイリ子ども基金/秩父ナイトバザール/常陸野すかんぽ団/照恩寺/手をつなごうネットワーク/テント前カンパ/東京研修センター/ドラゴンプロジェクト/日本キリスト教団沼津岳南教会/練馬子どもを守ろう会/はじめてきもの小梅/はっぴーあいらんど祝島/バレエカレッジFEYA/ピースライブインこうち/ビートルズ資料館/東所リサイクルの会/ひばりが丘グレイス教会/日本キリスト教団下関教会婦人会/百町森エコプロジェクト/ひゃっきんコンサート実行委員会/広河隆一非核・平和写真展開催を支援する会/広島県子どもの読書連絡会/福音館書店労組/フクシマを思う実行委員会/福間行政書士事務所/福山市人権平和資料館/古河市子どもの未来を守る会/文化の泉/ベルク/遍照院/法然院/ほっとふるサロン/まちかど美術館/宮崎県美術協会/民宿夢民村の宿泊者/みんなで映画を見よう会/みんなのノーニュークス西東京/みんなの測定所ふじみーる/武蔵野市民学校「東京原発」上映会/芽ばえ社/横浜市教祖/横浜市民測定所/ライフ北九州職員一同/北海道高教祖/牧野内総合法律事務所/優輝学習スクール


ちくしの会主宰者の竹内喜久江さん(画家)は当基金代表黒部信一の小学校時代の同級生とのこと。5月25日から29日まで東京で開催されたチャリティ展覧会。会のメンバーの作品と竹内さんの作品(合計約50枚)と黒部代表の本2種20冊を完売されたそうです。

日本書法院パリ支部たのしみま書道教室を主催されている粟田さんより:円が安くなったので換金すると少し差が出ました。もっと売れると良いのですが、絵画と違って今時書など買う人は滅多にいないので、あまりお役には立てません。(と書いていらっしゃいますが、たびたび寄付金を送っていただいています)

アメリカのNewYorkで友人たちと”StudioBPMNYC”という施設の運営をしており、”StudioBPMForJapan”というイベントを通して、義援金活動をしています。https://www.facebook.com/studiobpmforjapan

「売上の一部は、『未来の福島こども基金』に寄付させていただきます」(2013/6/14)(以下、クレヨンハウスブログより一部抜粋):楽曲「空より高く」を被災地への応援歌とし、「3・11を決して忘れない」との思いを広めたく、この春に『CD絵本 空より高く』を刊行いたしました。(中略)基金代表の黒部信一さんは小児科医で、「チェルノブイリ子ども基金」の活動を長く支えてきました。寄付の件をとても喜んでくださり、「福島の子どもたちのために大事に使います」と言ってくださいました。

アメリカ、カナダ、フランスで展示会を開き、今回はじめて日本で展示。立体あり、写真あり、スパンコールありと、とっても素敵でした。見に来ていた親子も、その場で自分の龍を描いて、また追加。来場者も、そのつながりにどんどん参加していけるという形です。このドラゴンを、郡山の子どもたちや避難している大人たちにも見せてあげたいと次の展示を目ざしてAさんが計画中。(パリでのチャリティ展覧会の募金を手渡しでいただきました。詳しくはfacebookをご覧ください)

そのほか、3・11東日本大震災追悼法要で集められた寄付金を送ってくださった、京都法然院ほかの寺院および宗派を超えた宗教団体のみなさま。また、ご自分のCDを売って、たびたび寄付を送ってくださる方、すべてをお伝えできませんが、みなさまのさまざまな取り組みに感謝申し上げます。


1、本会の名称:「未来の福島こども基金」
2、目的:福島原発震災に遭った被災者を支援するため、情宣・募金活動を行う
3、会費:3000円、学生会員2000円、維持会員1万円の年会費を納入する*
4、役員:代表1名、若干名の世話人をおく。世話人の中から会計、監査を選任する
5、会員はそれぞれ可能の範囲で創意工夫して自由な支援活動を行う
6、本会は印刷物、メール、ネット、等の媒体を通じて適宜活動報告を行う
7、毎年1回、総会を開き、事業および会計について報告する
8、事務局:353-0006埼玉県志木市館2-3-4-409向井方
〈問合せ〉Tel:090-3539-7611Mail:fromcherno0311@yahoo.co.jp
9、活動開始:2011年6月1日より
(会計年度6月1日より翌年5月31日まで)

*会費には寄付金も含まれる
※経費は募金額の1割以内をめどとする
※当基金は任意団体です

*4月26日に行われたチェルノブイリ27周年救援キャンペーン講演会は来場者が360人で、会場が満席になる盛況でした。多くの方々のご支援により、今年も救援イベントを成功させることができました。心から感謝いたします。
*フェイスブック(facebook)に未来の福島こども基金のページができました。ホームページとあわせてご利用ください。
https://www.facebook.com/pages/未来の福島こども基金-Fukushima-Childrens-Fund/369059843207671


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