2023年11月発行ニュースレターNo.27

チェルノブイリから学び、子どもたちを守る 未来の福島こども基金ニュースレター

未来の福島こども基金ニュースレター
from chernobyl No.27 2023年11月発行
チェルノブイリから学び、子どもたちを守る

ご支援者のみなさまへ
日曜日(11/12)ニュースレター27号を発行しました。
今回もボランティアのみなさんに助けていただき感謝します。
通常でしたら、数日中にみなさんのところに到着のはずでしたが、業者さんの都合により配送が遅れています。
到着までもう少しお待ちください。
ひと足先にwebに掲載させていただきます。
総会の報告など盛りだくさんの内容になっています。
ご覧いただけましたら幸いです。

ニュースレターNo.27のPDF(8MB ※読み込みに時間がかかります)はこちらからダウンロードできます。
みなさま、ぜひご覧になってみてください!

沖縄・球美の里 ファミリー保養

台風6号が久米島に襲来。施設に被害が生じたため、残念ながら夏休み後半の保養は中止となりました。施設のメンテナンスも終わり、9月から保養が始まりました。(写真は9月の保養)

たらちね測定ラボ報告

12年間の活動から思うこと

認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね

認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね
理事長 鈴木薫

https://tarachineiwaki.org

いわき放射能市民測定室たらちねは、2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故を受けて活動を開始しました。
放射性物質の拡散は目に見えず、においもなく、痛さを感じることもない、姿のない環境汚染と被曝被害です。人生で初めて、そんな恐ろしい原発事故を経験した被災地の私たちは、放射能を測定により可視化することで、汚染の値を知り、家族と地域の人々の健康を守るための市民ラボを開設しました。
「市民が放射能の測定をするなんて、行政に対する反逆だ!」と開所当時、地域の役所の人たちが声を荒げたりする時期もありました。原発事故に備えた防災の体制が全くなかったために、その時期は、行政の人たちも自分たちが知らないことを市民が行うことに得体の知れない恐ろしさを感じたのだろうと思います。

たらちね測定ラボの意味

たらちねの測定活動は、市民の科学的自立の象徴だと感じています。
原発事故が起きたあの日、人々は身を守るための正確な情報を与えられず、知ることもなく、余計な被曝をさせられました。国も東電も、人々が身を守るための情報は出さず、「直ちに健康に影響はない。落ち着いて行動してください」と役に立たない嘘の情報を繰り返すだけでした。「あんな目には、二度とあいたくない」そんな市民の気持ちが、科学的自立の必要性を考える形に発展していったのだと思います。国の政策と管理の中では、時に市民の安全よりも優先されることがあり、その中で市民は命を軽んじられることを知ったからです。やむに止まれない状況の中で、たらちねの測定は成長していきました。

測定核種について

現在、たらちねのラボでは、セシウム134、セシウム137、トリチウム、ストロンチウム90の測定をしています。
福島第一原発事故の後、日本国内には約100か所の市民測定ラボが立ち上がったといわれています。原発事故から13年目に入ろうとしている今、その数は激減していますが、たらちねの測定ラボは月日の経過とともに、多くの支援者に支えられながら、設備を整え、技術を高めてきました。
たらちねの測定ラボの大きな特徴は、専門家にしかできないといわれるベータ線による測定ができることです。測定核種はトリチウムとストロンチウム90です。世界中の放射能を測定する市民ラボの中で、これらの核種を専門家レベルで測定できるのはたらちねだけです。その点で、世界で唯一の市民活動となっています。

クロスチェックについて

たらちねでは、開所当時から丁寧な測定を心がけてきました。測定技術が向上するにつれ重要になったのは、クロスチェックです。クロスチェックは、専門機関により値付けされた標準試料(高い放射能を含んだ、ほうれん草やクローバー、海水など)を測定し、事前に証明されている決められた値を出すことができるか?検証をしたり、同じ試料を民間の専門機関と測り比べし、同じ値が出せるのか?など行い、たらちねの測定技術が正しいかどうかを確認する作業です。測り比べをする専門機関は、国や電力会社が測定を依頼する日本分析センターや九州環境管理協会などです。
このクロスチェックは、測定技術の確認だけでなく、測定機器の不具合なども確認することができます。正しい値を出すために必要不可欠なものです。たらちねでは、この作業を定期的に行い、測定技術の安定を確保しています。

福島第一原発から放出される処理汚染水について

東京電力福島第一原発の処理汚染水は8月24日の初回からこれまで、3回放出されています。
たらちねでは、2015年から福島第一原発沖1.5kmに船を出し、海洋調査を行ってきました。万が一、汚染水が放出された時に、放出前のデータがなければ汚染に気づくことはできず、調査で得た測定値は、そのための重要な基準になると考えたからです。調査を継続しながらも、海洋放出以外に汚染水の保管をする方法があるのに、まさか本当に海に放出する日が来るとは思っていませんでした。

漁業者との約束を破り、地域住民への説明も行わず、同意も得ない中、放出に踏み出した岸田政権には、まともな理屈で立ち向かっても無駄であることを思うと、なんとも言えない気持ちになります。
思えば、原発事故が起きてからというもの、放射能汚染や被曝の問題については、デタラメな情報であっても、言った者勝ちのようになってしまっています。見えない、におわない、感じない環境汚染の性質上、科学的根拠を示しながら説明できる力がないと、デタラメでも力のある言葉に押し切られてしまうことが本当に増えていて、人間の直感や誠実さや真実を追求するという力が弱くなっているなぁ、と感じる毎日です。

マイクロプラスチック汚染はいつから始まったのか?それを知ることはできませんが、福島第一原発の放射性物質による海洋汚染は、間違いなく今からスタートしています。
国や東電、メディアはトリチウムのことばかりを取り上げ、話をしますが、この度の処理汚染水の中身はトリチウムだけではありません。トリチウムと合わせ、他の核種の動向を見て、事故を起こした事故炉からの放射性物質がどうなっていくのか、私たちは知る必要があると思います。
たらちねでは、この海の状態を科学的に追いかけ、子どもたちに伝えていくことが大切だと考えています。また、汚染の状況を可視化することにより、処理汚染水放出ストップの判断につながる可能性もゼロではないと思います。
今の政権に、それは期待できないかも知れませんが、時代が変われば、たらちねの測定結果が役立つ時が必ず来ると信じて、これからも継続していきたいと思います。

たらちねの測定活動は、開所からこの12年間、支え続けてくださった人々の意思とともにあります。現場のスタッフは自分たち自身が被災者でありながら、それぞれに子どもたちへの思いを持って日々活動しています。いろんな立場のいろんな人の力が束になり、この市民ラボは動いています。

たらちねラボ

たらちねラボ

震災と子どものこころ 渡辺 久子

原発事故のもたらしたこころの分断
文明のもたらした地球汚染・いのち・生活破壊
大人が謙虚にふりかえり、子どもらの信頼をうらぎらない
自分をめざしなおし、子どもとともに考えなければ うまくいかない

児童精神科医 渡邊醫院副院長 世界乳幼児精神保健学会副会長 

皆様こんにちは。今日は未来の福島こども基金にお招きいただきまして大変光栄です。私は黒部先生の後輩で、「気がついたら黒部先生の懐の中に入ってた」みたいな感じで、気がついたらいわきの「たらちね」とお付き合いが始まってたんですね。

私は12年間、ずっと福島から学び続けています。そして今週も福島の郡山の夜6時半から9時までの子どもの研修会に行きました、もう60回目ですね。現場の保育園の先生や学校の先生や小児科の先生が集まって、子どもたちの問題について相談をする。最初の頃には、子どもを簡単に発達障害とか、多動とか言ってたんですけどね、これは日本の風潮なんですよ。放射線被害で福島がひどい目にあう前に、日本全土が不勉強な児童精神科や精神科のために、子どもたちがレッテル貼りのベタベタにされて、薬漬けのひどい目にあっています。しかもWHOはもう薬ではないと言っている。

メンタルな治療はやっぱり保養ですよ。いい空気、いい食事、いい活動、そしていい信頼関係ですよね。薬が世界中で売れなくなった時に、日本だけはまだ売ろうというのです。日本の児童精神医学というのは、本当にこれからです。

原発事故のもたらした心の分断は凄まじいですね。今日の私の話は子どもと一緒に考えなきゃダメで、ホッとできる関係、命を守る原点で、胎児期から本当に守られなければいけない。そういう人間の性質をきちんと社会が守らなければいけないというところから始めたいですね。

「たらちね」の自分たちの活動の冊子の中に「私たちは何があってもただいる」と言う宣言があったんです。何があってもただの母でいいんですよ。子どもはお母さんが大好き。つまりお母さんが笑っていれば子どもはまず大丈夫という、その基本のきのところに私たちは戻る必要があるわけです。子どもがどんなところでも生き延びるようなメンタル、生き延びられるようなやり方は何か、を一緒に考えたいと思うんです。

いかなる極限状態でも、子どもをPTSDから守る、一言で言えば人間は人間によって支えられてる。緒形貞子さんが国の安全保障じゃない、人の安全保障だと言ったように、誰かが誰かを見ている、しかも子どもからすれば自分ができないことをやってくれる大人がいて、その人が離れないでいればいいんですね。そういう意味で、これから超高齢化社会になりますからシニアの役割はすごく増えると思います。そうするとお母さんが教育ママで虐待の母でも、お父さんがドメスティックバイオレンスの父でも、近所のおばちゃんがね、ちゃんといい子だねと言って、そして叱る時もちゃんと叱るけどね、おばちゃんの宝と言ってから叱れば、子供がPTSDというか、トラウマを受けないというあたりは言えると思うんですね。避難が必要な時にも、家族全員が避難、つまりくっついてること。

実はこれは人類が発達した時の人類進化の原理なんですよ。今現在の脳の大きさ(1400ccぐらい)に人間が達し止まっている。これはとても大事なことで、人間性が進化を遂げて完成した、完成した人間性の土台の中には言葉や理屈はない。実際に50万年ぐらい前に脳が今のようになったとしても、言葉が発達するのは7万年前。そうすると約43万年は言葉がない、理屈もない中で、人間はジェスチャーで十分に仲良くそして人を殺すことなく生きていた。人間は農耕して、貯めて、富が出てきたら、欲が出てきて殺し合いが起きた。ですから本来、人間というのは決して殺し合わないんだということ。これすごく大事なことだと思うんですね。だから人間の原点に戻るろうよと。学歴は関係ないんです。

ピンと張ったゴムのまま福島の方たちは生き延びてきて、自分の限界を感じた人たちが順に少し緩めていく。少しずつ緩めていく。じゃないとピシッとある日心臓が止まりますよね、過労死で。そこら辺を防ぎながらやってきたのだと思うんです。そうしてたらコロナも終わった。つまり震災国日本の私たちは、台風・地震・津波・火山、いろんなものによって鍛えられている。そして命の儚さを知っている。「消えていっても必ず若者が、残った人がついでくれる」と信じてるのだと思うんです。日本人は儚さということを、自分たちの自然との共生にちゃんと組み入れて、そして潔く、「自分の今できることはやるんだ」ってやってたんだと思うんですね。

変なマニュアルのノウハウで被災とか子どもの心とか言うなかれと。歴史はちゃんと振り返らなきゃいけない、辛かったことは辛かった、人は泣ききって泣ききって次に行けということが言われてるんですね。だからそうなると日本は例えばチェルノブイリそれから東日本大震災の福島以前に沖縄の問題があって、広島・長崎があって、朝鮮半島の問題があって、いっぱいあるじゃないですか。だからそういうことに対して、恐れないで向き合うということをやっていくのがいいんじゃないでしょうか。破壊は密かに続くんです、きれいごとでごまかすなと。きちっと向き合って悪かったと言うと何かが変わるんです。

それから言葉と理論のセラピーばっかりしている欧米の治療法に今新しい革命が起きています。それは例えばレイプされたとか殺されそうになったとか、いろんなひどい目にあって薬物療法、薬物中毒になったり、幻覚・妄想状態になって統合失調症のレッテルが貼られたりしている人たちでも、安全圏の中で叫びまくる、つまり自分の中の本当に生き生きと生きてる自分がよみがえるまで叫べば、トラウマを退治できるということがわかった。私はアメリカのレバインという人の本を読んだら、もう夢中になった。吠えろと言うんで、そこから私の渡辺医院の児童精神科の外来は吠える道場にしました。

1回本当の自分の芯を出している子どもの姿を見た方がいいんです。思春期は老人嫌い、それは普通だもの、当たり前じゃないですか。やっぱりつぼみの子どもたちがドライフラワーが好きって言うと変だなって思わなきゃいけないわけです(笑)

(注)ユーモアをまじえたイキのいい言葉がポンポンと飛び出しました。
紙面に掲載したのは講演のほんの一部です。ユーチューブでぜひ、渡辺先生の声を聴いてください。
https://fukushimachildrensfund.org/event-20230806/

当日アンケートより

  • 久子先生の講演はとても刺激を受けました。聞かせていただきありがとうございました。たらちねの活動は初めて知りました。私もこれから自発的に自分のやれることをやっていきたいと思います。
  • 急増する発達障害の治療に必要なのは、健康な生活、安心な環境、信頼関係というお話、とても納得できました。子どもを守る体制を作ることが、社会を変える基礎になると痛感しました。
  • 凝縮されたお話の数々、素晴らしいと思いました。生命と人間社会について、今日伺ったことを反芻していきたい。この機会、ご縁に感謝です。
  • 現在のチェルノブイリ子ども基金の現地での活動報告を聞いて福島の子どもたちの活動も長いスパンで考えていかなければならないと、あらためて覚悟が出来ました。後半の渡辺先生のパワフルな講演では、母としての子どもとの関係性について、我が身を振り返り、今からでもできることを実践したいと思います。物事をはっきりと表現されて、気持ちよかったです。ありがとうございました。
  • とても力強い先生に『こんな風に考え行動できるようになりたい』とあこがれます。思春期が20歳を越えて続き、対社会や対人を考慮して決定できるのは27歳ごろなんだから、大人はしっかり大人になれているか。言うべき事や信念を持って関われているかが大切だと痛感しました。「お口にチャック、手は後ろ」でも「心もまなざしも子どもに」が難しいけどやっていきたいと思います。そしてそんな尊い子どもたちが放射能被害で生涯をつぶされることのないよう、〝何もできないから口を出さない、触れない” ではなく、できることを何か一つずつ長いスパンでやっていきたいと思います。
  • 大変貴重な講演会でした。福島の子どもたちのお話がもう少し聞きたかったです。広島、長崎、沖縄、一つとして片づいてないのだと改めて思いました。あきらめないことですね。
  • 私も妹もアダルトチルドレンで、子どもと本音の関わりができず、苦しんできましたが、仏教に出会い、少しずつ〝今”をありのままに生きる大切さを歩みだせました。家族、まわりの方々と、そのままで安心していられる関わりを作っていきたいです。勇気をいただき、ありがとうございました。
  • なぜ、チェルノブイリに比べて被害が可視化されないのか?なによりも母親の不安が子どもに影響することがよくわかりました。
    所沢の汚染度についても子どもに対する影響についてねばり強く主張してまいりたいと思います。
  • たらちねクリニックの支援をしているのですが、「支援する」という私にはかまえがあった。もっと自分をさらけ出して、かまえず自分らしく生きようとしてみることで、わかることがあるかと思いました。たくさん学ばせていただきました。
  • 生で聴かせていただけてよかったです。すべてに感銘を受けました。大人(老年域?)の私もまだめげない、絶対にあきらめない、で生き抜こうと思います。今までの出会いと感謝、そして失敗の数々を生かせるように!
  • 科学的知見とご自身の体験を交えた面白いお話でしたが、テンポが早すぎてついていけないところがあった。
  • 今日の講演会、ズームで参加させて頂きました。渡辺先生の知識と経験、お話しの楽しさに引き込まれました。こんなに素晴らしい方がいらしたんですね。会場でお聴きしたかったな~と思いました。
  • 〔問〕環境省が所沢に汚染土を持って来る予定地の隣が保育園なんですね。親の不安をどういう風に行政に対して言ったらいいか、お聞きしたい。

    〔答〕とにかく国会議事堂に全部運び込むことですよ。無責任でしょ。私たちは怒るわけです。ストライキをするわけです。

  • 〔問〕現在は、発達障害バブルとも言えるほど、保育や教育の場で発達障害の診断を受け、投薬される子どもたちが増えています。そこで、渡辺先生にはどのようなケースで診断を下し、どのような治療をするのかをお聴きしたい。

    〔答〕これはワークショップが1週間ぐらいできます。つまり発達障害はすごく難しくて百人百色なのね。だから一人の子どもを診断したら医者としての責任として、その子どもが本当に発達障害なのか、どんな発達障害なのかを最初は毎週呼んで最低30分は観察して、そして適切な指導をして、積み重ねていく必要がありますね。私はそういうふうにやってきたので50年前に6歳だった子どもが今56歳です。そして56歳の子どもたちが発達します。ゆっくり。

(注)詳細は動画をご覧ください。

支援のページ

カケコミ KAKECOMI(白河市)
まかないこども食堂たべまな

代表 鴻巣麻里香

「そういえば、マスクしてない顔を初めて見たかも」
「久しぶり!なんだかすごく背が伸びててびっくり!」

高校生スタッフと筆者

高校生スタッフと筆者

 

そんな声がそこかしこから聞かれた2023年の夏でした。少しずつマスクを外しはじめた子どもたち。そしてウイルス感染への不安から外出が難しかった子どもたちも、こども食堂のお茶の間に戻ってきました。素顔での会話、額をよせあっての内緒話、弾ける笑顔、会話と笑いに満ちた食卓。「ただいま」とやってきて真っ直ぐ水道で手を洗い、消毒し、検温する、一連の流れがすっかり生活習慣として身についている様子の中に、約3年にわたる社会的混乱の残滓を感じますが、子どもたちは少しずつ活気あふれるこども食堂の「元どおり」を蘇らせてくれています。

それでも、危機は決して過ぎ去ったわけではありません。不登校児童生徒の人数、子どもの自死件数は増え続け、「コロナが原因」という過去の分析や説明が虚構であったことが暴かれました。社会的危機は、子どものメンタルヘルスに多大なる影響を与えます。しかし危機そのものは要因ではなく、トリガー(引き金)であると私たちは考えています。そもそも子どもを守る社会基盤が脆弱で、福祉制度の網の目は粗く困窮し虐げられた人々が置き去りにされ、自己責任論が蔓延し、子どもや女性の人権が軽視される世の中は、感染症や災害といった社会的危機において容易に底が抜けます。その抜けた底から落ちてしまうのは、子どもたちや女性たち、社会的マイノリティの人々です。社会的危機の影響は、つまり平時の世の中がいかに「優しくないか」の指標と言えるのではないでしょうか。

こども食堂のありようは「元どおり」に近づきましたが、子どもたちを取り巻く危機は続いています。物価高は多くの家計を圧迫しており、三食充分に準備できないという保護者からの悲鳴、そして家計を支えるために時間を削ってアルバイトをし、衣食や教育にかかる費用を自己負担する高校生からのSOSが急増して います。フリースクール等オルタナティブな学習支援施設は増えましたが、費用的な問題から利用できる子どもは限られ、不登校児童生徒の増加に社会資源が追いついていません。虐待通報件数の増加に対応できる人員配置が追いつかず、助けを求めても守られない子どもたちは大人への失望から口を閉ざしています。

子ども食堂玄関/こどもはまかい、大人はカンパ

子ども食堂玄関/こどもはまかい、大人はカンパ

コロナ禍という社会的危機の前から弱い立場に置かれた人たち・子どもたちを置き去りにしたまま、世の中は「元どおり」を目指して進んでいます。それは声の小さな人たちを振り落としながら進んでいく、東日本大震災の「復興」と重なって見えます。力によって牽引する復興ではなく、小さな声を組み続ける回復を。私たちKAKECOMIが大切にしている理念です。そのために私たちができることをひとつずつ。みなさまからのご支援をいただいて、こども食堂やシェアハウス(シェルター)の活動を継続しながら、目の前の新たな必要性に応えるために、長期休暇中のこども食堂事業強化や高校生のシェアハウスショートステイ事業、不登校や性的マイノリティ当事者など困難を抱えた子どもたちのクローズドな居場所、食料品や日用品の配布事業に取り組んでいます。東北の片隅の小さな団体への継続したご支援に深く感謝申し上げるとともに、いただいたご支援を子どもたちに確実に届けるべく粘り強く活動を続けてまいります。

フードバンクふくしま/いわき自立生活センター内

特定非営利活動法人いわき自立生活センターが運営する「フードバンクふくしま」に、今年もお米を支援(新米三百キロ長崎県島原産”ゆめほのか”)。

  • 10月3日、内郷地区での豪雨災害の方の支援を一般社団法人Tecoさんと共に食品と、衣服の支援を行いました。 
  • 10月13、14日 NPO法人こみゅーんさんが生理用品の提供も同時に行いました。こみゅーんさんは女性のつながりサポート事業を行っています。

沖縄・球美の里の声

沖縄・球美の里

今年の7月末から8月にかけて、大きな台風が久米島を襲いました。

7月からの夏休み保養は(ドルトムント独日協会様ご支援による)、施設も被害を受けたため、残念ながら8月の保養は中止となりました。
コロナ禍により、全国の保養団体が保養を実施出来ず、寄付も集めることが難しくなり、団体が存続できなくなったところが多くなりました。

チェルノブイリでは事故から37年が経過しても保養は続けられています。ベラルーシは、チェルノブイリの子どものための保養施設が9施設あり、国が運営に関わっています。その一つ「ナデジダ (希望)」は、普段の保養は自治体が学校単位で選んで順番に保養をさせていて、夏休みなどの長期休みのときは日本やドイツなど海外の団体の寄付により保養を行っています。

ウクライナではチェルノブイリ法ができても、独立後、政治の混乱が続き、国としての保養はほぼ出来ていない状況です。姉妹団体のチェルノブイリ子ども基金の支援による夏の保養、ウクライナは2年振りでしたが両国で保養を実施できました。

チェルノブイリの状況をみても、子どもたちの健康を守るという点で、まだまだ福島の子どもたちの”保養が大切”ということを広く訴えていきます。
保養の写真は、紙面ではモノクロですが、球美の里のブログ・インスタではカラフルな写真がいっぱいです。
ぜひ、ご覧ください。

球美の里ブログに保養の様子を掲載中。

ファミリー保養

真剣な顔と笑顔がまぶしい・・・11月保養の子どもたち 楽しかったこと!
泥染め、折り紙、シーサーづくり、海遊び

沖縄・球美の里 アンケートより〔保護者の声〕

  • 年上のお兄さん、お姉さんの遊び(なわとび、けん玉など)を見て、娘も挑戦する場面が。友達との関わり方などいつも園へ預けて、見えていなかった面がたくさん見れて発達段階を知れたのが、親として大きい。
  • たらちねさんのHPで保養のことを知りました。楽しかったことは畳石ビーチです。いつもよりたくさんご飯を食べていました。ピラミッドと図書館が特にすてきで、近くに住んでいたら毎日通いたいくらいでした。やってみたいことは料理を教えていただきたいです。

くまべこ子どもを守るママの会

「くまべこ子どもを守るママの会」~3・11後、大熊町から会津若松市に避難したママたちが作った会

応援しています!
https://www.facebook.com/kumabeko/

帯状疱疹のお話

黒部 信一(小児科医師)
黒部信一ブログ
未来の福島こども基金 代表
チェルノブイリ子ども基金 顧問
いわき・たらちねクリニック 顧問

どんな病気?

今さかんにテレビで帯状疱疹のワクチンを宣伝しています。帯状疱疹とはどんな病気で、本当に必要なワクチンでしょうか。

病気の主は水ぼうそうのウイルスです。50歳以上の多くの人はこどもの頃に、水ぼうそう(水痘)にかかっています。水ぼうそうが治った後も、水ぼうそうのウィルスが身体の中(脊髄の後根神経節)に潜んでしまい、じーっと静かにしています。ところが、何らかの原因で抵抗力が落ちてくると、ウイルスが動きだし再び活性化して、病気を起こします。それが帯状疱疹です。つまり水痘ウイルスに一度かかったことのある人の病気です。

発病率は年齢によって異なり、小児では非常にまれで若年成人では 千人に2~3人。80歳以上の老人では 千人に10人におよび、一生の間に8~20%の人が発病するといいます。帯状疱疹に二度なることは極めてまれです。

発病するきっかけは、からだの免疫が低下した時です。その最大の原因はストレスで、今は、がんが隠れていることや抗がん剤やステロイド剤の使用、強い放射線被曝、手術、病的な老化、ウィルスや細菌の感染などによって身体の抵抗力が落ちると、潜んでいたウィルスが活発になって発病します。コロナウイルスに感染したり、コロナワクチンを接種した時にも出る人がいます。

ウイルスは左右どちらかの脊髄の神経細胞の中に潜んでいて、そこから出て神経に沿って皮膚に出てきます。それで皮膚の症状も、神経に沿って左か右のいずれかに帯状に出ます。神経が刺激されるのでチクチク刺すような痛みが出て、その後その部分が赤くなり、その上に小さな水疱ができます。水疱の真ん中が少しへこんでおへそのようになるのが特徴です。水疱はやがて黒褐色のかさぶたや、ひどいと潰瘍になります。大体2~3週間で治ります。
水疱は胸から背中、腹部から腰が多く、どこにでもできますが、必ず身体の片側だけにできて、神経に沿って帯状に広がります。

かかった時にどうするか?

時と共に必ず自然に治ります。CMで痛くなると宣伝していますが、痛みは個人差があり、痛いのを嫌う人には痛く感じ、平気な人はあまり痛くありません。特別な治療法はありません。子どもは痛がらないことが多く、大人でも平気な人は少なくありません。治療は痛みを軽減するだけです。病気を嫌うと痛みがひどくなります。普通は皮膚の症状が消えると同時に痛みも取れます。時には、皮膚の症状がとれても痛みが続くことがあります。

抗うつ剤と抗不安剤を併用した上で痛み止めを飲むと、痛みが楽になることが多いので、精神的な側面が強いようです。経口抗ウイルス剤や抗ウイルス剤軟膏が有効との証拠はなく、せいぜい2日くらい治療日数を短縮できる程度でしかありません。

ワクチンというのは、子どもの水ぼうそうのワクチンで、特別なものではありません。痛いことを嫌う方以外には必要なワクチンではありません。誰でもなる訳でもないし、誰でも痛みがひどくなることでもありません。

長く体の中に潜んでいて、ある時突然発病する病気で、結核と同じです。抗がん治療している人で、痛みを嫌う人にはお薦めですが、普通は薦めません。むしろ帯状疱疹になると、がん検診をお薦めしています。

2022年度 総会 8/6志木

1,会計報告 2022年6月1日~2023年5月末日
2,未来の福島こども基金活動報告~子どもたちの未来のために 黒部信一代表
  姉妹団体 チェルノブイリ子ども基金より緊急支援報告 佐々木真理事務局長
3,渡辺久子先生講演会 子どものこころの専門家・乳幼児精神科医(5~8頁参照)

※当日の様子はすべてYoutubeにアップしています。
https://youtu.be/9kdbAeDnRJo

※両基金の報告資料は、ホームページにアップしています。動画と合わせてご覧ください。
https://fukushimachildrensfund.org/event-20230806/

  • 会計報告はこの後掲載。総会後、ホームページにも掲載済みです。
  • 黒部代表は1年間の活動をスライドにより紹介しました。また、昨年カテリーナコンサートを実施し、緊急カンパをウクライナに送りました。チェルノブイリ子ども基金からの支援報告は前号(NL26)に掲載しています。カテリーナを通した支援については、今年の7月に支援報告と写真が届き、合わせて報告しました。福島を忘れないようにしよう、ということと、コロナ禍についての話もありました。
  • チェルノブイリ子ども基金の佐々木真理事務局長は、現在支援している子どもたちの保養の様子や避難先にも支援を送っている状況を報告しました。

カテリーナより;
みなさんからのお金と他の方からのご寄付を合わせて東ウクライナ ドネツク市、南東部のドンバス市、ドニプロペトロウシク州に食べ物、救急用品、子供用粉ミルクなどを、ウクライナのチームを通じて直接お届けしています。この地域にお届けした理由は、爆撃を受け続けている地域のすぐ近くだからです。

会計報告2022年6月1日~2023年5月31日

寄付団体名(2022年6月1日~2023年5月31日)敬称略

団体名のみ記載しています。多くの個人のみなさまからもご寄付をいただいています。感謝申し上げます。

ACT21/伊藤法律事務所/小川医院/教覚寺/語り部地蔵/カトリック仁川教会/川和保育園/川和保育園父母の会/川和保育園父母の会ボランティア委員会/具志川モービル/原発とめよう飯能/玄米ごはん・カフェじょじょ/コドモホンヤエホンテーブル/桜の高遠閣小松傅一朗の孫一同/志木かっぱ油田/遍照院/非核平和を求める写真・絵画展事務局/たんぽぽ法律事務所/チェルノブイリ子ども基金/千葉友の会/「沈黙の春」収益/フクシマを思う実行委員会/法然院/民宿夢民村/桃山基督教会/やじんき法律事務所/山形の会/リサイクルグループカリーナ/龍国寺/ロックイベント‘Kaiki Fund’/一人静/九条の会三条/平和について考える会三条/ピースライブインこうち/桜井書店/自然環境センター/渋谷民商布ぞうり「結」/小池音楽教室/新しい風/西小岩幼稚園/日本大通り法律事務所/網走友の会/養源寺「柔心地蔵」

お知らせ

  • みなさまにお届けしているこのニュースレター、活動報告・寄付金の使途報告を基本としています。今年の総会は、広島忌の8月6日志木市において小児精神科医の渡辺久子先生をお招きして行われました。会場参加者40名、ズーム参加者90名でした。猛暑の中、会場までお越しいただいたみなさまありがとうございました。zoom併催により遠方のみなさまには喜ばれました。また、地元の保育士さん、介護士さんなどが参加してくだいました。ご自身の仕事にお役に立つなら幸いです。
  • ウクライナの状況は厳しいまま続いているのに、パレスチナとイスラエルが争っています。いつも市民がひどい状況に置かれます。なんとか停戦を、と願うばかりです。
  • 人間の争いをあざ笑うように世界では、地震、洪水、酷暑、森林火災と目を覆うばかりの災害が頻発しています。地震だけでもトルコ、シリア、アフガニスタン、インドネシア、ネパール、フィリピンと、もれないぐらい起きています。今、この瞬間も世界の子どもたちのいのちが脅かされていることを思うと切ない。大昔、今ほど争いがなかったとの渡辺先生の話を嚙みしめています。
  • 福島第一原発の放射能汚染水海洋放出が始まりました。「海洋放出以外に汚染水の保管をする方法があるのに」とたらちね鈴木さんの言葉。汚染水はどんなに薄めても汚染水だと思います。そして、汚染水の処理に関して、管理能力を疑う重大な事故が起き、作業員2名が被曝。これから長〜い時間がかかる汚染水問題。う数えき地域の人々と対話して、地域の人々の健康を守る観点に立って決めてくほしい。
  • 今回も振込用紙を同封させていただきました。すでに会費・カンパを振り込まれた方は、ご容赦ください。振込用紙、裏面を改訂しました。
  • たらちね・こども保養相談所から保養募集チラシが届き、こちらも同封しました。保養の応募に直接関係ない方も周りの方に保養の大事さを伝えてください。

未来の福島こども基金 規約

1、本会の名称 :「未来の福島こども基金」
2、目的: 福島原発震災に遭った被災者を支援するため、情宣・募金活動を行う
3、会費 :3000 円、学生会員 2000 円、維持会員 1 万円の年会費を納入する*
4、役員: 代表 1 名、若干名の世話人をおく。世話人の中から会計、監査を選任する
5、会員はそれぞれ可能の範囲で創意工夫して自由な支援活動を行う
6、本会は印刷物、メール、ネット、等の媒体を通じて適宜活動報告を行う
7、毎年 1 回、総会を開き、事業および会計について報告する
8、事務局:埼玉県志木市
9、活動開始:2011年6月1日より(会計年度6月1日より翌年5月31日まで)

※会費には寄付金も含まれます。
※経費は募金額の1割以内をめどとする。
※当基金は任意団体です。税金控除の対象となりません。ご了解ください。

継続支援のお願い

引き続きのご支援をお願いします。すでに振り込まれた方はご容赦ください。
また、チラシをまわりのかたに広めていただける場合、枚数をお知らせください。お送りします。どうぞよろしくお願いいたします。

寄付金、会費の振込先

郵便振替口座
振替口座: 00190-0-496774
口座名: 未来の福島こども基金
他の金融機関からゆうちょ銀行へお振込の場合
店番 : 019
店名 : 〇一九店(ゼロイチキュウ店)
預金種目 : 当座 0496774

三菱UFJ 銀行 神楽坂支店
支店名: 神楽坂支店(支店番号:052)
口座名: 未来の福島こども基金
口座番号:普通口座0064011

海外から送金の場合 – Remittance from Overseas
– Remittance from Overseas
BENEFICIARY’S BANK/ACCOUNTBANK:
THE BANK OF MITSUBISHI UFJ, LTD
3-7, KAGURAZAKA, SHINJYUKU-ku,
TOKYO 162-0825, JAPAN
BENEFICIARY’S BRANCH:KAGURAZAKA BRANCH
SWIFT/BIC:BOTKJPJT
ACCOUNT NAME:Fukushima Children’s Fund
c/o Mukai Tate 2-3-4 409 Shiki City Saitama.
353-0006, JAPAN
ACCOUNT NUMBER:052-0064011

未来の福島こども基金
HP:https://fukushimachildrensfund.org/
FB:facebookページ
事務局:〒353–0006 埼玉県志木市館 2-3-4-409 向井方
TEL 090-3539-7611 FAX 048-470-1502
Eメール:info*fukushimachildrensfund.org
(Eメールの「*」は「@」に変えてください)

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